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[医療人] 2009/12/11[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第46回
ふじた矯正歯科クリニック
藤田芳章先生

挫折感を味わった自転車の旅

fujita_dental_clinic01.jpg 高校生の頃、漠然と将来は映画監督になりたいと思っていました。映画が好きだったのはもちろん、細かな作業を重ねてモノを作っていく仕事が、自分に向いていると思ったんです。それに、自己表現したい年頃でもありましたしね。
 二年生の時のこと。ろくに授業も聞かず、地図帳を眺めていた私は「旅に出よう!」と思いたち、夏休みに自転車旅行に出かけました。そして野宿をしながら東京から高知までの道すがら、多くの人々と出会いました。その中でも大学生の一行と意気投合し、おしゃべりするうちに「君、将来どうするんだ」という話になって。私が「映画監督になろうと思っている」と言うと、彼らは「そのために、どれだけの準備が出来ているんだ」「それほど甘いものではないよ」と親身になって言ってくれたんです。悔しい反面、これはちょっと見つめ直さなきゃダメだと思いましたね。僕よりずっと魅力的に見える彼らが、口をそろえて「現実は甘くない」と言うのですから。さらにペダルを踏み続けながら「お前には、自分の将来をかけて映画を作っていく心積もりがあるのか」と自問自答し続けました。そして、さしたる決意もないのになんとなく進路を決めようとしている自分に気付き、将来について現実的に考え始めたんです。私は、やはり手に職を持つべきだろうと思いました。そうなると、父を見ていたこともあり、国家資格である医療が良いと考えたんです。
 私の父は眼科医なのですが、私自身はそれまで医師になろうと思ったことはなかったし、両親からも医師になれとか、勉強しろなんて言われたことはありませんでした。好きな道を選びなさい、という感じでね。私は小中高と公立だったし、文系で、それまで理系の勉強なんて全然していませんでした。歯科医師を目指し始めてから少しは勉強したけれど、さすがに浪人は覚悟していましたね。ところが高三の夏休み明け、まったく予想していなかったのですが、推薦が来まして。無事、歯科大学に進学することになったんです。

医療のあるべき姿を、父の姿で感じて

清潔な医療機器。患者さんのストレスを軽減するため、照明や椅子の座り心地にもこだわっている。

 学校に入ると、周囲はマイカー持ちのお坊ちゃまが多く、私が鈍かったせいでそれほどやりづらいとは感じませんでしたが、やはり何となく空気の違いはあったように思います。私はホテルの配膳や深夜のガソリンスタンド、家庭教師などいろいろなアルバイトをしましたが、他にはバイトしている人なんていなかったと思います。月末にはお金がなくなって、カレールーだけ溶かして食べたことがありました。すごい気持ち悪くなるんですよ、これが(笑)。3年間テレビが買えずに過ごしたのも良い経験になりました。
 暗記中心の試験勉強は相変わらず苦手だったけれど、歯科の授業は前のほうに座って、まじめに聞いてました。でも、まともに勉強するようになったのは国家試験に合格した後ですね。卒業して研修医として患者さんを診ることになって、遅ればせながら自分が進んだ道を自覚しまして、精進しました。そこには父の影響がありました。父は医療に多くの力を注いでいました。家に帰ってきても宿題をするがごとく勉強をしていてね。父のもとには、患者さんからの感謝の手紙や贈り物が送られてくることがしばしばありました。そんな父の姿を見ていたので、医療とは「人のためにならなければいけない仕事なんだ」という考えが子どもの頃から刷り込まれていきました。その後、勉強の甲斐もあってか、矯正医や歯科衛生士を指導する立場になりました。そのなかで、後輩たちと一緒に学びあえたことも、大きな糧になりました。
 さらに幸いなことに、私を教育して下さった石川晴夫先生は、矯正歯科の世界最高峰であるワシントン大学の大学院で学び、帰国後、教授に就任された方でした。ワシントン大学は、矯正分野の教育システムがとてもしっかりしています。それを、いわば「直輸入」して下さって、教育システムを構築実践してくださいました。石川先生は矯正歯科界に散在していた情報を系統立てられ、私は動物実験や臨床実験で得られた根拠に基づく合理的・客観的な診療を学ぶことが出来たんです。つまり、どこかの権威の先生がこう言うから、というではなく、科学的なコンセンサスを得られている診療を学ぶことが出来たのです。石川先生のもとで矯正歯科医としての基礎を固めることができて、本当に幸運でした。

Cure(治療)よりも、Care(手入れ)と考える

虫歯と歯周病について知ってもらうため、患者さんひとりひとりに丁寧に説明。

 歯を守るのが、われわれ歯科医・矯正歯科医の仕事。一般には治療の方に重きが置かれていますが、歯を守るのに大切なのは「虫歯や歯周病にならない、進行させない」ことだと考えています。いざ虫歯になってみると、意外と大変でしょう? 食べることは生きることなんだと、改めて気付いたりしますよね。しかし日本では、歯のプライオリティが低い。「虫歯にならないように歯をケアする」という意識が浸透している北欧には、虫歯になったことのない子ども達がたくさんいます。一方、日本は技術も進んでお金もある国なのに、歯を守る方法や理由についての教育がとても遅れている。五十代で歯が一本もないという方もいらして、非常に残念な事実だと思います。
 矯正歯科は審美の面がとりあげられがちですが、私は「健康」あってこその「美しさ」だと感じ、矯正治療も歯を守ることに大いにお役立てるのだと思っています。きれいな歯並び噛み合わせにして、歯を磨きやすくすることは想像以上のアドバンテージです。
 私が矯正治療にあたって一番大事にしていることは、患者さんに治療方法の選択肢をできるだけたくさん差し上げて、それぞれの利点と欠点をお話ししてから選んで頂くということです。歯科医の価値観を一方的に押し付けることは避けたいと思います。
 治療方法が決まったあとには、すべての患者さんに対し、「虫歯と歯周病はそもそもどういう病気か」をお話しします。1時間程かかるので、時に嫌がられますが(笑)。でも、私がなぜその予防処置をするのか、それによって何が起こるのかを分かって頂くことは、お互いにとって非常に大事なステップです。新たなむし歯が出来ずに矯正治療を終えたあとに歯を守っていくのも、最終的には患者さんご自身です。だからこそ、治療とケアについて筋道立てて知ってもらうことが大切なんです。
 私が今、歯並びや咬み合せを指摘されて不安に思っている方や親御さんにお伝えしたいのは、歯並びが悪くても健康な人はたくさんいるから安心して下さいということ。そして同時に、歯並びを治したいと思っている人にも、きれいに治るから心配しないでほしいということです。ものごとにはいろんなゴールがあるのです。大事なのは、どういうゴールがあるかを知り、そこに必ずある利点と欠点を知り、知った上でご自身が選択することです。それは治療を受ける際に最も大事な部分なので、矯正に限らず、医師と話す時には気後れせずにどんどん聞いていってほしいと思います。患者さんにお渡しする情報の正確さと、その情報どおりに治す技術で矯正医は評価されるべきだと思います。

患者さんの笑顔が、仕事への答え

 情けないことに、今は仕事ばかりで趣味を楽しむ時間があまりとれないんですが、体調維持のために泳ぐようにはしています。近所の区民プールで週2回40分間、ちびくろサンボの虎のようにぐるぐると…バターになる一歩手前まで(笑)。泳いでいる間はいろいろな考えが浮かんできます。あの患者さんの治療は、こうすればさらに良くなるかな、とかね。
 歯科医師として一番嬉しいというか、安心する瞬間は、患者さんが治療を終えて最後に鏡を見た時に、顔がふわっと明るくなる時ですね。私は治療する前に「こうなります」とお伝えするので、そうしなければならない。ちゃんと出来たかどうか、答えの一つがその笑顔だと思いますので「ああ、良かった、喜んでもらえた」と、ほっとします。
 これからも、やはり患者さんの満足度アップを追求するだけですね。例えば今までだいたい一年六ヶ月かかった治療で満足してくれた。そうなってくると、今度はもうちょっと早くしてあげたいなと思うようになります。もちろん、そこには利点と欠点の兼ね合いもあるわけですが。そのなかでなるべく短い治療期間で、なるべく痛くないように、最小の患者さんの努力で、というように、満足度をこつこつ上げていきたいですね。

取材・文/瀬尾ゆかり(せお ゆかり)
フリーライター・編集者。編集プロダクション勤務を経て独立。医学雑誌や書籍、サイトの編集・記事執筆を多数手掛ける。ほかに著名人・文化人へのインタビューや、映画・音楽・歴史に関する記事執筆など、ライターとして幅広く活動している。

ふじた矯正歯科クリニック

医院ホームページ:http://www.fujita-kyousei.com/
fujita_dental_clinic_b02.jpg fujita_dental_clinic_b01.jpg fujita_dental_clinic_b03.jpg fujita_dental_clinic_b04.jpg
1階は花屋さん。日当たりのよい待合室では、北欧の可愛いキャラクターが出迎えてくれる。
京王線、調布駅北口から徒歩2分。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

矯正歯科

藤田芳章(ふじた・よしあき)院長略歴
藤田芳章院長
1993年 日本歯科大学卒業、臨床研修医(1年間)
1994年 日本歯科大学歯科矯正学教室-研究生
1997年 同教室-助手、矯正科初診担当医。埼玉歯科技工士専門学校講師(1年間)
1998年 同教室-矯正臨床新人教育担当、
日本歯科大学附属歯科専門学校 歯科衛生士科講師(3年間)
2001年 同附属病院小児・矯正歯科-助手
2002年 同科-退職
2004年 ふじた矯正歯科クリニック開院


■資格・所属学会他
日本矯正歯科学会、日本顎関節学会、日本インプラント矯正研究会

■学会活動
ワシントン大学のミニ・レジデンシーコース終了。
日本矯正歯科学会認定医を取得。認定医第1回更新済。
IDS-GINZA「矯正専門医コース;診断・治療学編」終了。



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