痛み治療において、患者さんと医師の”想い”をつなげるために必要なこと

[タイプ別痛みの治療] 2014年3月20日 [木]

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 慢性疼痛は約2700万もの人が悩んでいるといわれ、しかも「治療に満足している」患者さんは4人に1人に過ぎません。課題の1つに挙げられるのが、患者さんと医師の間で病気や治療に対する”想い”が異なってしまうことです。「痛み」は本人にしかわかりません。そんな主観的要素が大きい症状を、患者さんと医師との間でどのように伝え合うべきか。製薬メーカーやメディア会社はそこでどんな貢献ができるのか。世界最大の製薬メーカー・ファイザーの日本法人トップ、梅田一郎氏に、国内最大級の医療メディアを運営するQLife社長・山内がお話を伺いました。

痛み治療において、患者さんと医師の”想い”をつなげるために必要なこと

梅田一郎 ファイザー株式会社 代表取締役社長
1952年大分県生まれ。岡山大学法文学部法学科卒業後、1980年台糖ファイザー(現ファイザー)入社、広島医薬販売部に配属。1990年抗炎症剤グループ プロダクトマネージャー。1995年ファイザーオーストラリア中枢神経系プロダクトマネージャー。2005年取締役に。 経営企画担当、人事・総務担当、医薬営業担当、常務執行役員プライマリー・ケア事業担当を経て、2009年代表取締役社長に。

山内善行 株式会社QLife 代表取締役社長
1965年静岡県生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業後、米国ボストンの都市計画・商業施設開発コンサル会社を経て、1994年に株式会社カレンを設立、代表取締役に就任。2006年にカレン会長に就任、株式会社QLifeを設立して社長に就任。

劇的な進歩を遂げた痛みの治療

山内本日は『痛み』というテーマでお話をしていきます。かつては梅田社長ご自身が、ファイザーの製品担当マネジャーとして『痛み』領域に関わっていたそうですね。その時代と比べ、現在の痛み・疼痛治療の環境はどのように変化していますか。

梅田私が現場で消炎鎮痛薬を担当していたのは約25年前です。当時は“痛み治療”というと、腰痛、変形性関節症、リウマチなど整形外科でよく見られる痛みや、術後・抜歯後の痛みが中心でした。ところが現在では、激しい痛みがあるリウマチに対して新たな生物学的製剤が登場したことなどからもわかるように、単に痛みだけを取り除くだけでなく、神経に起因する痛みやがんに伴う痛み、リウマチの痛みなどといった、痛みの原因から考え、その原因に最も適した治療薬を選択する時代へと変わりました。

患者が悩む「痛み」の伝え方を形に

山内確かに、痛みを取り巻く医学的進歩には目を見張るものがありますね。ただ、医学が進歩してもそれを実行できなければ意味がありません。痛みは、患者の訴えがなければ治療を始めることはできませんから、医師と患者間の会話が非常に大事です。

梅田痛みを取り除きたいという患者さんの“想い”は今も昔も変わりません。ですが、痛みを上手に表現して医師に伝えることは、簡単なことではありません。“想い”を的確に医師に伝えられていない患者さんが多いのではないかと個人的には思っています。
 現在、ファイザーは「ビリビリ!ジンジン!チクチク!は、神経からのSOS」 というCMで神経に関する痛みの啓発活動を行っています。この背景には、ビリビリ、ジンジンという言葉で表現されるものを痛みといっていいのか、その表現で医師は痛みを理解してもらえるのか、そもそもそのような痛みを本当に医師に相談して良いのかなどの迷いが患者さん側にあるのではという思いを私たちが抱いていたことがあります。

「痛み」をすくい上げる重要性

山内打撲で腫れていればいかにも痛いわけですが、神経の痛みは、人によって表現が違う点が難しいですね。言葉の使い方は、年齢や地方によっても違いますから。

梅田あのCMは患者さんだけでなく、医師にとっても患者さんと良好な関係を築くためのヒントといってもいいかもしれません。先日、私の親族が糖尿病と診断されたのですが、その教育入院に付き添うことがありました。問診で「痛みはありませんか?」と尋ねられて、本人は「ありません」と答えていました。糖尿病では糖尿病性神経障害があり、その自覚症状は痛みやしびれです。しかし、問診ではしびれを尋ねられなかったので、私が「しびれはないの?」と尋ねたところ、本人は「ある」というわけです。ズキズキする痛みはないけれど、ピリピリ、ジンジンするしびれはある、と。このように患者さんとじっくりお話をすることで、困っていることや悩んでいることを引き出せるのだと思います。

高齢化社会で重要性が増す痛みの軽減

山内あのTVCMは私の周辺でも大変評判が良いです。患者・医師間のコミュニケーション問題の解決に光を当てている、と。「痛いのぐらいは我慢しろ」と自分に言い聞かせてしまう方が日本人には多いですからね。

梅田痛みは高血圧などのように数値では表せません。そのため、コミュニケーションがうまくいかないと「あまり強い痛みではないので、我慢すればよい」という結論になりかねません。しかし、私たちは今回のCMで「がまんしない、あきらめない」と明確にうたいました。なぜなら、痛みがあると歩行や運動に不都合が多く、日常生活で活動量が減ってしまうからです。活動量が減少すると筋肉が衰えますから、転倒しやすくなり、結果として骨折リスクが高まり、寝たきりへと繋がります。痛みのコミュニケーション・マネジメントは、高齢化社会のリスク・マネジメントにつながるといってもいいのかもしれませんね。

痛みの情報発信をマルチチャンネルで

山内痛みのケアは高齢化社会のすそ野であるというお考えは、斬新かつ重要な提言です。私たちQLifeは、「痛み」に特化した情報サイトを運営しているため、多くの患者さんからの声が寄せられますが、痛みの持つ奥深さや難しさに日々驚かされています。

梅田痛みの治療を開始しても、充分な効果を感じられず、でも医師に遠慮をしてそのことを伝えられない患者さんもいらっしゃいます。私たちは、未治療の患者さん、治療中の患者さんの双方に対して、積極的にインターネットなどマルチチャネルで引き続き痛みの解消の可能性と重要性をお伝えしていく必要があると考えています。

(提供:ファイザー株式会社)

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