出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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肥満、やせから考えられる主な病気

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肥満から考えられる主な病気

◆ 起こりやすい主な合併症

◆ 肥満を起こす主な病気

症状 疑われる病気
顔がむくんで赤ら顔、手足が細くなる、おなかは太る、にきび、月経異常 クッシング症候群
汗をかかない、寒がり、顔や手足のむくみ、皮膚乾燥、脱毛、声がれ 甲状腺機能低下症
動悸、頻脈、発汗、見当識障害、性格変化、過食 インスリノーマ
多尿、多飲、多食、疲れやすい 糖尿病
無月経、不妊、多毛・にきび・低声音などの男性化 多囊胞性卵巣症候群
その他 ステロイド薬・抗うつ薬などによる薬剤性肥満、遺伝性肥満

やせから考えられる主な病気

◆ 食欲低下による食事摂取量の減少

症状 疑われる病気
精神的要因 神経性食欲不振症・摂食障害
うつ病

◆ 食物の消化吸収障害によるもの

◆ 代謝亢進によるエネルギーの消費増大によるもの

◆ 栄養素の利用障害によるもの

疑われる病気
糖尿病

◆ その他

疑われる病気
アルコール依存症

肥満、やせとは?

肥満とは、体内の脂肪組織が異常に増加した状態を指します。やせは体重が異常に減少した状態です。正確には体脂肪量を測定して判定しますが、日常では普通、BMI(ボディマス指数)で判断します。BMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値で、25以上を肥満、18・5未満をやせ(低体重)と判定します。身長(m)の2乗に22をかけた数値が標準体重です。
肥満のいちばんの問題点は、肥満によって糖尿病などの重大な病気を合併しやすくなること。一方、やせの場合は、その背景に何らかの病気の存在が疑われることです。急速な体重の増減はもちろん、徐々にでも変化があるようなら一度検査を受けてください。

太ってきた

肥満がなぜ問題になるかといえば、さまざまな生活習慣病の温床となるからです。主な病気をあげれば、まず代謝異常としての2型糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症・痛風。循環器系では高血圧、狭心症や急性心筋梗塞、脳血管系では脳梗塞や脳出血、呼吸器系では睡眠時無呼吸症候群・ピックウィック症候群、消化器系では脂肪肝、骨・関節系では変形性膝関節症など。加えて、子宮がん、乳がん、大腸がん、前立腺がんなどのがんも肥満によって起こりやすくなると報告されています。
肥満は、体重だけでなく腹部の体型にも注意する必要があります。肥満には、皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満があります。

皮下脂肪型肥満

おなかの皮下に脂肪が多くつくタイプで、おなかをつまむと厚みを感じます。このタイプは、病気に直接的には結びつきにくいとされていますが、BMIが30以上になる場合には危険が伴ってきます。

内臓脂肪型肥満

おなかのなかの臓器のまわりに脂肪(内臓脂肪)が多くつくタイプです。このタイプは、生活習慣病をはじめとするさまざまな病気の元凶であることがわかっています。
内臓脂肪型肥満か否かの正確な診断は腹部CT検査が必要ですが、目安としては、ウエストの周囲径が男性は85cm以上、女性は90cm以上なら、内臓脂肪型肥満の可能性があります。
内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態を、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)といいます。メタボリックシンドロームがあると、狭心症や急性心筋梗塞、脳梗塞や脳出血などの動脈硬化性疾患が発症しやすくなります。日本における診断基準(2010年8月現在)は、
●必須項目:内臓脂肪の蓄積
・ウエスト周囲径…男性85cm以上、女性90cm以上
●右記に加え、以下の2項目以上
・脂質異常…中性脂肪150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満、のいずれか一方または両方
・高血圧…収縮期(最高)血圧130mmHg、拡張期(最低)血圧85mmHg、のいずれか一方または両方
・高血糖…空腹時血糖値110mg/dL以上となっています。
なお、血清脂質のひとつにLDLコレステロールがあります。これはメタボリックシンドロームの診断基準には含まれていませんが、日本動脈硬化学会ではLDLコレステロールこそが動脈硬化の特に重要な危険因子としています。そのため、2008年から導入された「特定健診・特定保健指導」でも測定項目のひとつとされています。
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肥満は、クッシング症候群などさまざまな病気があって起こることもありますが、いずれもそれほど頻度の高いものではありません。ほとんどは過食、運動不足、ストレスなどによって起こりますので、太ってきたなと自覚したら標準体重に近づけるよう日常生活を改善してください。

やせてきた

過労や睡眠不足、精神的ストレス、運動のしすぎ、偏食など病気ではなくてもやせますが、やせの場合は肥満と異なって、その基礎にやせる原因となる病気のあることが少なくありません。
食欲が低下してやせてきた時は、主に胃腸や肝臓、膵臓など消化器系の病気などが考えられます。どの病気もさまざまな症状を示しますが、がんの場合、やせのみが主症状のこともあります。
そのほか、胃や腸などが障害されると食物の消化吸収が低下してやせてきますし、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、さらに肺結核などの慢性感染症があると、エネルギーの消費量が増加してやせが起こってきます。やせを自覚したら早めに受診し、原因を解明することが何より大切です。