専門医より推薦を受けた診療科目・診療領域

鹿児島大学病院は、複数の有名専門医(※)の間で「自分や家族がかかりたい」と推薦されています。
このページでは、専門医より推薦を受けた分野(科目、領域)の特色や症例数、所属している医師について取材・調査回答書より記載しています。 ※推薦、選定して頂いた有名専門医の一覧表

消化器内科(旧第2内科)

分野

消化器・一般内科

特色

消化器センター消化器内科部門として、上記スタッフを中心に病棟、外来の診療を行っている。外来診療体制は初再診日として月、木曜日を中心に行っており、水・金は一部予約制で特殊外来を行っている。また、入院は9階西病棟を中心に診療しており、2008年は延べ499名の入院患者を受け入れた。現在、消化器内科は肝臓グループと消化管・胆膵グループの2つの診療グループがある

★肝臓グループでは肝癌や慢性ウイルス性肝炎の診療が中心である。肝癌の診療では従来からの血管造影下の動脈塞栓療法やラジオ波焼灼術に加え、造影エコーやReal-time Virtual Sonography(RVS)を用いた、より緻密な局所療法を行っている。慢性ウイルス性肝炎の診療においては、2008年から始まったインターフェロン治療への助成制度において、県内唯一の拠点病院として中心的な役割を果たしている

★一方、消化管・胆膵グループでは、食道から大腸までの消化管や胆嚢、胆管および膵臓といった幅広い臓器にわたって、診断や治療を行っている。難治性疾患である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)の診療には力を入れており、早期の食道、胃または大腸癌に対する内視鏡的粘膜切開剥離術(ESD)にも積極的に取り組んでいる。さらに、より侵襲の少ないカプセル内視鏡も導入しており、これまで未知の領域であった小腸病変の診断が可能となった

★また、消化器内科は新規医薬品の臨床試験(治験)に積極的に参加しており、大学病院として難治性疾患の克服に取り組むと共に、最新の知見に基づいた最先端の治療を地域の還元できるよう努力している。

症例数

2008年度の外来患者数は初診652名、再診10,924名で計11,576名。入院患者数は肝疾患294名、消化管・胆膵205名の計499名。

医療設備

ハイビジョン内視鏡装置、NBIシステム、超音波内視鏡、拡大内視鏡、カプセル内視鏡、腹部超音波、RVS装置、ESD機器、ラジオ波焼灼装置、腹部血管造影検査装置、CT、MRIなど。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

消化器外科I

分野

消化器・一般外科

特色

当科は南九州の外科治療の中核施設として、癌を中心に高度先進医療や離島を含めた地域医療を展開している。臓器毎にグループに分かれており、専門性を持って癌の診断・治療を行っている。治療方針は腫瘍の進み具合のみならず、患者さんの全身状態を十分に把握して、根治性と術後のQOLの両立を目指している。癌の制御には手術療法とともに、抗がん剤による薬物療法や放射線療法を併用した集学的治療を行っている。

症例数

疾患別に治療内容や成績を示す

食道癌=年間手術件数は約50件。食道癌を中心に良性腫瘍、アカラシア、食道裂孔ヘルニア、食道破裂などさまざまな疾患の診療を行っている。リンパ節転移のない早期癌症例には内視鏡的切除術(EMR、ESD)、中期進行癌には十分なリンパ節郭清を伴う開胸食道切除術または胸腔鏡補助下食道切除術、高度進行癌では化学放射線治療を併用することで治療成績を向上させている。またステント治療やバイパス手術など患者QOLを重視した治療も行っている。最近はセンチネルリンパ節生検を用いた縮小手術も導入され、高度先進医療を実践している。食道癌の術後5年生存率は、粘膜癌97%、粘膜下層癌70%、中期進行癌(T2、T3)で40%であった

胃癌=年間の手術件数は約50例。早期癌の中で粘膜切除適応とならない病変に対してセンチネルリンパ節生検を併用した胃温存手術を行っている。腹腔鏡下のリンパ節郭清を伴う幽門側切除や全摘術が手術症例の60%を占めている。胃癌治療ガイドラインに沿った治療を基盤とした上で、さらなる治療成績の向上を目指して独自の臨床研究(抗癌剤の使用方法や胃の再建の工夫など)を展開している。とくにIV期の進行胃癌では抗癌剤と手術療法の組み合わせで治療にあたっており、数多くの長期生存例を経験するようになってきた。5年生存率は、I期96%、II期73%、III期56%、IV期28%である

大腸癌=2008年度の年間手術数は116件。内訳は結腸癌23件、直腸肛門癌34件、骨盤腫瘍16件、炎症性腸疾患19件、その他24件(痔核、ヘルニアなど)。腹腔鏡手術を積極的に取り入れており年々増加傾向である(平均50-60件/年)。大学病院の設備や機能を活かし、集学的治療(抗癌剤治療・放射線治療・温熱療法)を併用することで確実で取り残しのない安全な手術、機能温存手術を目指している。5年生存率はI期100%、II期87.6%、III期78.5%、IV期19.5%である

肝臓癌=年間手術60例。うち肝切除45例、ラジオ波などの焼灼療法10例。対象の7割は肝細胞癌で、胆管癌や転移性肝癌が残りを占める。近年、再発例に対する積極的な再・再々手術も増加している。最近5年以上、手術関連死亡はない。手術術式としては、腹腔鏡や胸腔鏡を用いた鏡視下手術も増加しており、これに最新の3D画像による手術シミュレーションを組み合わせることで、手術の低侵襲化と適正化を向上させ,良好な結果を得ている。また一方では、1990年より組織した県内主要施設の内科・放射線科合同の鹿児島肝癌研究会により、2,000例以上の症例集積を経て、各種治療の長・短所を解析し,個々の治療の標準化や集学化にも努めている.肝細胞癌の5年生存率は日本肝癌研究会集計のそれを上回っている。手術のみならず、最新の分子標的治療剤による肝細胞癌や転移性肝癌治療も開始しており、今後は高度進行癌に関しても一層の成績向上が望めるものと考えている

膵胆道癌=年間入院症例は膵癌70例、胆道癌35例。膵頭部腫瘍に対する標準術式である膵頭十二指腸切除術ではクリニカルパスを導入して、安全かつ確実な術後管理を行っている。工夫された膵頭十二指腸切除術では術死、膵液瘻ともに認めず、良好な成績を持続している。疾患や腫瘍の進行度に応じて、縮小手術や腹腔鏡による膵体尾部切除を選択している。膵胆道癌では高度進行癌が多いが、切除不能例に対しては放射線化学療法等を中心とした集学的治療を積極的に行っており、従来の治療より良好な成績を得ている。さらにQOLを重視した最新の外来化学療法は癌と共存して働く患者さんに好評である。診断に関しては、PETをはじめ、超音波内視鏡やIDUS(管腔内超音波内視鏡検査、細径胆道鏡などを駆使し精度の高い診断を目指している。また、分子生物学的な手法を用いた新たな診断方法に基づく治療の開発にも取り組んでいる

肺癌=肺悪性腫瘍の年間手術症例約80例。うち原発性肺癌約60例、転移性肺腫瘍約20例で、最近増加傾向にある。癌病巣の性質や転移状況、心肺機能をはじめとした患者の予備力の正確な評価により、個々の症例に応じた術式を選択している。すべての手術に胸腔鏡を導入し、根治性を確保しつつ低侵襲化を進めている。内科、放射線科との密な連携により、化学療法、放射線療法、手術療法を適正に選択し、肺ラジオ波焼灼術などさらに低侵襲治療も行っている。病期IA期では5年生存率が80%を超えている。

医療設備

電子内視鏡、超音波内視鏡、気管支鏡、腹腔鏡下手術器具、超音波凝固切開装置、ベッセルシーリングシステム、ラジオ波焼灼装置。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

呼吸器ストレスケアセンター・呼吸器内科

分野

呼吸器内科

特色

南九州エリア(離島を含む)をカバーする大学病院呼吸器内科として、各地域の医療機関と連携して、最新の充実した医療を提供し、また、南九州地域特有の疾患について原因や治療法を解明するため研究を行っている。日本内科学会、日本呼吸器学会および日本アレルギー学会の認定施設として、学生教育のみならず研修医の卒後医学教育にも力を入れている。また、公開講座などを通じて、喘息、COPD、肺炎といった身近な呼吸器疾患に関連する市民の健康意識向上にも寄与する。

症例数

気管支喘息=鹿児島ぜんそくネットワーク(専門基幹病院と一般かかりつけ医院の医療連携システム)を統括運営する医療機関として、啓蒙や情報発信を行う。また、専門基幹病院でもコントロールが難しい難治症例に対して入院での評価・治療導入なども行う

感染症=市中肺炎、院内肺炎に加えて、肺結核、非結核性抗酸菌症などの診断・治療を実施している。また、慢性気道感染症である気管支拡張症やびまん性汎細気管支炎などの長期管理やさまざまな基礎疾患による免疫不全患者に起こる日和見感染症の診断、治療を行っている

肺癌=組織型、進展度、合併症に応じ、新規抗癌剤や分子標的薬を中心とした化学療法、併用放射線療法など集学的治療を実施している。治療においては、できるだけQOL(クオリティオブライフ;生活の質)を維持できるよう院内の「緩和ケアチーム」とも連携し積極的な緩和治療を並行して行う。また、外来化学療法室も完備しており、社会生活を行いながらの化学療法も可能である。九州肺癌臨床研究機構LOGIKのメンバーとして最新治療の開発・研究にも参加している

COPD(慢性閉塞性肺疾患)=肺の生活習慣病ととらえ、呼吸機能による重症度や全身的な合併症を評価し、薬物療法に加えて、呼吸理学療法や酸素療法の導入・教育を行う

間質性肺炎=必要に応じ外科的肺生検による詳細な病理診断を行い、治療方針を決定する。また、全国の研究組織に所属し、急性増悪時のPMX吸着療法の有効性に関する検討も行う

肺移植=福岡大学肺移植チームとの緊密な連携の下、肺移植適応症例の移植登録、移植手術実施までの準備や手術後の長期間のケアも不安なく行える。

医療設備

X線検査(単純、断層)、ヘリカルCT、MRI、核医学検査(換気・血流、骨、ガリウム等)、血管造影検査、気管支鏡検査、呼吸機能検査、インパルスオッシレーション(IOS;気道抵抗測定装置;近日中導入予定)。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

呼吸器外科I

分野

呼吸器外科

特色

当科は南九州の外科治療の中核施設として、癌を中心に高度先進医療や離島を含めた地域医療を展開している。臓器毎にグループに分かれており、専門性を持って癌の診断・治療を行っている。治療方針は腫瘍の進み具合のみならず、患者さんの全身状態を十分に把握して、根治性と術後のQOLの両立を目指している。癌の制御には手術療法とともに、抗がん剤による薬物療法や放射線療法を併用した集学的治療を行っている。

症例数

疾患別に治療内容や成績を示す

食道癌=年間手術件数は約50件。食道癌を中心に良性腫瘍、アカラシア、食道裂孔ヘルニア、食道破裂などさまざまな疾患の診療を行っている。リンパ節転移のない早期癌症例には内視鏡的切除術(EMR、ESD)、中期進行癌には十分なリンパ節郭清を伴う開胸食道切除術または胸腔鏡補助下食道切除術、高度進行癌では化学放射線治療を併用することで治療成績を向上させている。またステント治療やバイパス手術など患者QOLを重視した治療も行っている。最近はセンチネルリンパ節生検を用いた縮小手術も導入され、高度先進医療を実践している。食道癌の術後5年生存率は、粘膜癌97%、粘膜下層癌70%、中期進行癌(T2、T3)で40%であった

胃癌=年間の手術件数は約50例。早期癌の中で粘膜切除適応とならない病変に対してセンチネルリンパ節生検を併用した胃温存手術を行っている。腹腔鏡下のリンパ節郭清を伴う幽門側切除や全摘術が手術症例の60%を占めている。胃癌治療ガイドラインに沿った治療を基盤とした上で、さらなる治療成績の向上を目指して独自の臨床研究(抗癌剤の使用方法や胃の再建の工夫など)を展開している。とくにIV期の進行胃癌では抗癌剤と手術療法の組み合わせで治療にあたっており、数多くの長期生存例を経験するようになってきた。5年生存率は、I期96%、II期73%、III期56%、IV期28%である

大腸癌=2008年度の年間手術数は116件。内訳は結腸癌23件、直腸肛門癌34件、骨盤腫瘍16件、炎症性腸疾患19件、その他24件(痔核、ヘルニアなど)。腹腔鏡手術を積極的に取り入れており年々増加傾向である(平均50-60件/年)。大学病院の設備や機能を活かし、集学的治療(抗癌剤治療・放射線治療・温熱療法)を併用することで確実で取り残しのない安全な手術、機能温存手術を目指している。5年生存率はI期100%、II期87.6%、III期78.5%、IV期19.5%である

肝臓癌=年間手術60例。うち肝切除45例、ラジオ波などの焼灼療法10例。対象の7割は肝細胞癌で、胆管癌や転移性肝癌が残りを占める。近年、再発例に対する積極的な再・再々手術も増加している。最近5年以上、手術関連死亡はない。手術術式としては、腹腔鏡や胸腔鏡を用いた鏡視下手術も増加しており、これに最新の3D画像による手術シミュレーションを組み合わせることで、手術の低侵襲化と適正化を向上させ,良好な結果を得ている。また一方では、1990年より組織した県内主要施設の内科・放射線科合同の鹿児島肝癌研究会により、2,000例以上の症例集積を経て、各種治療の長・短所を解析し,個々の治療の標準化や集学化にも努めている.肝細胞癌の5年生存率は日本肝癌研究会集計のそれを上回っている。手術のみならず、最新の分子標的治療剤による肝細胞癌や転移性肝癌治療も開始しており、今後は高度進行癌に関しても一層の成績向上が望めるものと考えている

膵胆道癌=年間入院症例は膵癌70例、胆道癌35例。膵頭部腫瘍に対する標準術式である膵頭十二指腸切除術ではクリニカルパスを導入して、安全かつ確実な術後管理を行っている。工夫された膵頭十二指腸切除術では術死、膵液瘻ともに認めず、良好な成績を持続している。疾患や腫瘍の進行度に応じて、縮小手術や腹腔鏡による膵体尾部切除を選択している。膵胆道癌では高度進行癌が多いが、切除不能例に対しては放射線化学療法等を中心とした集学的治療を積極的に行っており、従来の治療より良好な成績を得ている。さらにQOLを重視した最新の外来化学療法は癌と共存して働く患者さんに好評である。診断に関しては、PETをはじめ、超音波内視鏡やIDUS(管腔内超音波内視鏡検査、細径胆道鏡などを駆使し精度の高い診断を目指している。また、分子生物学的な手法を用いた新たな診断方法に基づく治療の開発にも取り組んでいる

肺癌=肺悪性腫瘍の年間手術症例約80例。うち原発性肺癌約60例、転移性肺腫瘍約20例で、最近増加傾向にある。癌病巣の性質や転移状況、心肺機能をはじめとした患者の予備力の正確な評価により、個々の症例に応じた術式を選択している。すべての手術に胸腔鏡を導入し、根治性を確保しつつ低侵襲化を進めている。内科、放射線科との密な連携により、化学療法、放射線療法、手術療法を適正に選択し、肺ラジオ波焼灼術などさらに低侵襲治療も行っている。病期IA期では5年生存率が80%を超えている。

医療設備

電子内視鏡、超音波内視鏡、気管支鏡、腹腔鏡下手術器具、超音波凝固切開装置、ベッセルシーリングシステム、ラジオ波焼灼装置。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

循環器センター心臓血管内科

分野

循環器科

特色

2003年に旧内科学第一講座は大学院循環器・呼吸器・代謝内科学へと再編成されたが、現在でも広範囲な内科領域を網羅するその多様性を強みとして特定臓器のみにとらわれることなく全人医療を実践している。その中で循環器グループは、虚血性心疾患、心臓弁膜症、不整脈、高血圧、心筋症、先天性心疾患、高脂血症など幅広い循環器疾患に対応しており、鹿児島大学病院は日本循環器学会指定研修施設、日本超音波医学会認定専門医研修施設、日本心血管インターベンション学会認定関連施設、日本高血圧学会専門医認定施設に認定されている。鄭教授らが1989年に開発した『和温療法』は、現在では、心不全や閉塞性動脈硬化症の循環器疾患のみならず、軽症うつ、慢性疼痛、慢性疲労症候群、線維筋痛症、慢性閉塞性肺疾患、シエーグレン症候群などにも治療効果のあることが明らかになり、今後の幅広い臨床応用による発展が期待されている。また、鄭教授が2001年に日本で最初に開設した『女性医師による女性専門外来』も鹿児島大学から全国的に展開されつつある。当科では、患者のニーズに迅速に応えることと、患者の立場に立った医療を実践することを基本理念とし、若手医師と上級医が密接に連携するチーム医療を基軸にした診療を行っている。また、心臓血管外科と活発な協議を行い質の高い包括的循環器医療を実践している。

症例数

2008年の循環器グループの主な診療実績以下のとおりである。外来受診者数4,393例、病棟入院患者数419例、心エコー検査6,000例、心筋シンチ検査360例、心臓カテーテル検査437例、冠動脈インターベンション84例、不整脈に対するカテーテル焼灼術(アブレーション)90例で、観血的検査や治療における重篤な合併症は一例もみられなかった

★虚血性心疾患を含む循環器領域のカテーテルインターベンションの特色として、ドプラーガイドワイヤー、プレッシャーワイヤーを使用した冠血管機能検査、冠動脈内超音波検査を積極的に取り入れ、的確な診断と治療を行う工夫をしている。多くの合併症を有する高度複雑病変の症例が多いため、安全で良質な医療を提供できるようチーム医療を心がけている。また循環器疾患の集約的治療の一環として心臓血管外科と連携した治療も行っている

★不整脈に対する非薬物療法として、上室性頻拍症、心房粗動、特発性心室頻拍に加え、最近は心房細動症例が飛躍的に増加し、CARTO Merge systemを駆使して、年間140例(心房細動 90例)のカテーテルアブレーションを行っている。心房細動に対しては他施設に先駆けて左房内異常電位アブレーション法(CFAE ABL)を中心に行い、成功率は一過性心房細動が97%、慢性心房細動でも67%と良好な結果が得られている。その他、VT/VF症例に対するICD植え込み術、心不全症例に対するCRT-P/D植え込み術も積極的に行っている

★弁膜症に関しては、経験豊富な医師が、経胸壁心エコーや経食道心エコー検査にて的確に診断し、治療方針を決定している。最近では術前症例に3-Dエコーを用いることで、より詳細な弁の情報を外科医に提供している。またリウマチ性僧帽弁狭窄症に対しては、バルーンによる拡張術も行っている

★心筋症の診断に遺伝子解析を積極的に取り入れている。肥大型心筋症の左室流出路狭窄に対する経皮的心筋焼灼術や拡張型心筋症の心不全に対する和温療法など、最先端の治療を行っている。二次性心筋症に関する経験は国内で最も多い施設のひとつであり、心ファブリー病の酵素診断や酵素補充療法を始めとした治療においては世界的にもトップレベルの医療を行っている

★動脈硬化の危険因子である高脂血症や高血圧の診療も充実しており、最近では超音波検査による頚動脈や大動脈さらに下肢動脈の動脈硬化や静脈血栓の評価にも著しい実績がみられ、さらにABI検査や脈波伝播速度やCardio Ankle Vascular Index (CAVI)による動脈硬化の診断も増えつつある

★和温療法は、遠赤外線均等加温サウナ室を用いた治療法で、循環器疾患としては心不全や閉塞性動脈硬化症に対して効果がある

★核医学検査としては、心筋シンチによる虚血性心疾患のスクリーニングに加えてMIBGやBMIPPを用いた心不全・心筋症へのアプローチ、またgated SPECTによる心機能評価を行っている。

医療設備

心臓カテーテル装置2台、心臓超音波装置9台、トレッドミル、エルゴメーター、ホルター心電図、CT・MRIによる心血管造影検査、心臓核医学検査装置(心筋シンチなど)、IABP(大動脈内バルーンパンピング装置)、PCPS(経皮的人工心肺補助装置)、人工透析、LDLアフェレーシス、ABI測定装置、脈波伝播速度測定装置、CAVI測定装置、血管内皮機能測定装置、サーモグラフィー、レーザードプラ血流計など。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

腎臓・泌尿器センター(腎臓内科)

分野

腎臓内科

特色

腎臓内科の二つの大きな診療分野である腎炎と腎不全に加え、近年急増している糖尿病性腎症、膠原病に伴うループス腎炎などを対象に診療している。腎炎は急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎以外に、早急に的確な治療が必要となる急速進行性糸球体腎炎に対しても、迅速な診断と病棟における血液浄化法を含めた強力な治療が可能である。院内外で発生する急性腎不全の鑑別診断と的確な治療、慢性腎不全に対する全身管理・薬物療法・食事指導にも力を入れており、腎不全の増悪因子の同定と除去も行っている。当科消化器グループとの提携によりB型・C型肝炎などを始めとした消化器疾患に伴う腎炎症例に対しても十分な対応が可能である。

症例数

★症例数は外来患者数:年間延べ2,000人、入院患者数:年間延べ60人、腎生検症例数:年間30例(これ以外に関連施設での腎生検年間約100例も当科において免疫染色・光学顕微鏡による診断を行い、すべての標本を管理している)。疾患では慢性糸球体腎炎が最も多く、ついで糖尿病性腎症、ループス腎炎、良性腎硬化症、アミロイドーシス、多発性骨髄腫等が続く

★職場健診等で尿蛋白や尿潜血反応が陽性となった場合、早朝尿・1日尿蛋白定量・腹部超音波検査などを外来で行い、腎生検の必要性を判定する

★慢性糸球体腎炎に対する治療は、組織学的診断に基づき治療法を決定する。IgA腎症に対する扁桃摘出+ステロイドパルス療法も積極的に行っている。治療抵抗性の難治性ネフローゼ症候群に対しては、ステロイドパルス療法、免疫抑制剤内服、免疫抑制剤パルス療法、巣状糸球体硬化症に対してのLDLアフェレーシス療法も積極的に行っている。これらの治療は、未治療の選択を含めてすべて患者と家族との十分な意志の疎通を図り、納得の上での同意の下で行う。セカンド・オピニオン(他の施設の専門医の意見)の希望があれば積極的に対応している

★糖尿病性腎症に対する治療も病期に応じて積極的に行っている

★透析療法は、急性腎不全・急速進行性糸球体腎炎(RPGN)に対しては迅速に施行できる体制にある。慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症が進行して腎不全になった症例の場合、重症例では必要に応じて入院治療を行うが、通常は外来での通院治療を行う。透析療法(血液透析・腹膜透析)が必要となる場合には、当科関連施設(鹿児島県内に約30施設)へ紹介し導入を行っている。当科ではIgA腎症におけるさまざまな研究や鹿児島県の血液透析患者の肝炎追跡調査などを行い、国内外での学会発表、英文論文の発表などを行っている。

医療設備

超音波診断装置(腹部・心臓・エコー下腎生検)、CT、MRI、血液透析装置(HD、HDF、DFPP、免疫吸着、LDLアフェレーシス等を含む)。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

整形外科

分野

整形外科

特色

整形外科疾患に対するEBMに基づいた基礎・臨床面での学問を習熟させ、教育・診療・研究活動の面で優れた医師を養成するとともに、患者側に立った人間性豊かな医師を育成することを基本理念としている。新人医師1人に対し中堅の医員と助教の2人が屋根瓦式の指導を行い、診断および治療の基本を修得することができる。専門医13人。

症例数

外来患者数は1日平均60人、入院ベッド数は50床、手術件数は年間約600例である

腫瘍外科=年間手術件数約140例。骨軟部腫瘍の治療は当科の主要テーマの一つである。小児の骨肉腫に対する創外固定器を用いた患肢温存+脚延長術、骨盤腫瘍に対する骨盤半載+骨盤輪再建術、脊椎腫瘍に対する椎体切除・再建術、血管柄付骨移植による再建術など、大がかりな腫瘍切除と再建外科が行われている。転移性骨腫瘍も積極的に治療を行い、広範切除+人工関節置換による再建術が選択される。化学療法では放射線治療、温熱療法を加えたプロトコールを開始し奏効している。また小児科、血液内科の癌治療グループと協力し、PBSCT(末梢血幹細胞移植)による超大量抗癌剤の使用が可能となり、悪性骨軟部腫瘍の患者さんの生命予後は改善している。軟部腫瘍のカラードプラエコーを用いた診断を積極的に行っており、その質的診断においてMRIを凌駕する情報が得られている

脊椎外科=年間手術件数約180例。頸椎疾患が約60例、腰椎疾患が約40例、側彎症が30例、腫瘍疾患30例などである。頸髄症、腰部脊柱管狭窄症などが多く、合併症を抱えた高齢者の症例が増えている。頸椎後縦靱帯骨化症については原因遺伝子の解明、分子生物学的研究から国際的評価を受けるに至っており、その手術的治療は優れた成績をあげている。また脊髄砂時計腫に対して、胸椎部では胸腔鏡視下手術、腰椎部では環納式椎弓切除を用いた腫瘍全摘を行っている。脊椎インスツルメンテーション手術による早期離床、腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡下髄核摘出術による最小侵襲手術などは数多くの症例経験を持ち、患者さんの早期社会復帰を可能としている。顕微鏡手術も頻回に行っている。また、手術中・後にAVインパルス、フロートロンを用いた下肢静脈血栓症予防を行っている

股関節外科=年間手術件数約120例。変形性股関節症の治療法確立に向け様々な取り組みを行っている。股関節鏡を用いた関節症診断を行い手術法選択の一助としている。前・初期関節症に対する寛骨臼回転骨切り術、進行・末期関節症に対しても60歳以下の患者さんには、骨盤・大腿骨骨切り術併用手術を行い、関節温存に努めている。同時に人工関節手術も行い良好な成績を収めている。人工関節の再手術例が増加しており、他家骨移植、人工骨移植を導入し安定した手術成績が得られている。また、全手術例に対して手術後AVインパルス、フロートロンを用いた下肢静脈血栓症予防を行い、良好な後療法が行われている

手の外科=年間手術件数約20例。腕神経叢損傷、末梢神経障害や骨・関節損傷例が多く、マイクロサージャリーを用いた機能再建手術を行っている。腕神経叢損傷への神経修復術、移行術は優れた臨床成績を得ている。新鮮外傷よりも陳旧性障害が多く、機能再建術症例が多い

小児整形外科=年間手術件数約20例。関節疾患ではDDH、内反足などである。肢短縮に対してイリザロフ法による脚延長術を導入し、良好な機能を獲得している

スポーツ外科=膝関節靱帯損傷や半月板損傷、肩関節障害に対して関節鏡視下手術を行っている。靱帯再建術、関節制動術など最小侵襲手術を行い早期スポーツ復帰を可能としている。また競技レベルに応じたメディカル・チェックを行い、スポーツ障害の予防および手術後療法の確立を目指している。

医療設備

MRI、CT、骨塩量測定装置(DEXA)、カラードプラエコー、無菌室、リハビリテーション施設、治療サウナ室、高気圧酸素療法室。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

眼科

分野

眼科

特色

鹿児島県内を中心とした南九州地区の最終病院として、あらゆる眼科疾患の治療に対応する機能を有する。国立大学医学部として研究や学生教育を行う一方、地域の開業医とも共同して治療、研修、卒後教育を積極的に行う。特に一般の開業医では治療が困難な症例や、全身状態が良くない患者さんの治療を行っている。

症例数

2008年の初診患者数は3,500人、総患者数は8,500人。積極的に手術治療を進め、硝子体手術数は年間600件を超え、九州内でもベスト5に入っている

網膜硝子体の手術治療=網膜はく離、増殖硝子体網膜症、糖尿病網膜症、黄斑円孔、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性などに積極的に硝子体手術を行っている。網膜はく離の治療には従来強膜内陥術が行われることが多かったが、手術ストレスの減少、早期の視力回復のために積極的に硝子体手術を行い、良好な成績をあげている。トリアムシノロンを用いた硝子体手術を開発した坂本教授を中心に、積極的にこれを用いた手術を行っている。網膜剥離の初回手術治癒率は95%以上である

網膜硝子体の内科的治療=網膜硝子体疾患には加齢黄斑変性症や血管腫などの内科的治療が必要なものが多い。特に加齢黄斑変性は患者数の増加が著しい反面、専門病院が少ない。坂本教授、大久保講師、園田助教を中心にして加齢黄斑変性に対して積極的な診断・治療を行っている。診断にはフルオレセイン蛍光眼底検査に加えてインドシアニングリーン色素眼底造影検査、OCT検査などを行っている。光線力学的療法、硝子体内トリアムシノロン注入治療、抗VEGF注入治療を行っている

白内障=白内障手術は一般開業医でも広く行われている「確立した」手術といえる。当院でも、通常の無縫合小切開白内障手術はもちろんのこと、緑内障手術との同時手術などの複雑な白内障の手術を行っている。心臓病や脳硬塞後などの全身管理が必要な患者さんの手術も積極的に行っている

ぶどう膜炎=南九州地区は、HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)感染者数が日本の中で特に多い地区であり、HTLV-1によるぶどう膜炎の診断治療には日本で最も経験がある。世界で初めてこの疾患を報告した中尾准教授を中心にして診療を行っている。サルコイドーシス、悪性リンパ腫などのぶどう膜炎の診断治療のため、硝子体手術も積極的に行っている。最近、抗TNF抗体治療を積極的に行い、ベーチェット病患者の眼発作を劇的に改善している

緑内障=山下助教が中心になり診療をしている。様々なタイプの緑内障に対応している。積極的に手術治療を行っているが、診断のためには(特に正常眼圧緑内障の場合)、1日入院などを行い眼圧の日内変動などを厳密に調べてから診断治療へ進む。患者さんの負担を少なくするため、白内障手術との同時手術も積極的に行っている

角膜、結膜=内野、藤田が中心になり角結膜疾患の診療に当たっている。特に角膜移植を積極的に行っている。年間約50症例に全層角膜移植を行い、すべて透明治癒した。最近は角膜内皮移植術を積極的に行っている。また、外眼部疾患の治療に不可欠である羊膜を常時冷凍保存しており、積極的に羊膜移植治療を行っている。生活環境の変化に伴い、増加しているアレルギー疾患とドライアイにも新しい診断と治療法を試みている

小児眼科=先天性疾患、未熟児網膜症、屈折異常や弱視等の小児に関するあらゆる眼疾患の診療を行っている

外眼部=難治性である鼻涙管狭窄に対し、近年に開発された内視鏡を用いて治療を行っている。斜視の治療は、10歳前後からは局所麻酔で手術を行っている

腫瘍性疾患=眼瞼や眼内の悪性腫瘍に対し手術を行っている。特に眼瞼の腫瘍の場合は耳鼻科・皮膚科と連携した形成を行い、術後の整容に努めている。

医療設備

各種レーザーを始めとして、先端医療を行うのに必要な機材は整っている。再生医療に必要な細胞培養装置、遺伝子診断装置も完備している。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

分野

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

特色

鹿児島県の教育機関である大学病院の一診療科であることから、耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域において全ての疾患に対応している。頭頸部悪性腫瘍症例においては、腫瘍摘出後の皮弁術等の再建も、全て当科にて行っている。また、臓器温存を重要視し、化学療法(抗がん剤)治療にも力を入れ、積極的に行っている。中耳手術においては聴力改善を目的に積極的に鼓室形成術を施行し、鼻副鼻腔領域においては鼻内視鏡を用いることで侵襲の少ない手術を目指している。睡眠時無呼吸症候群に対しても積極的に診断から治療を行うことが可能であり、しっかりとした検査を行い、その結果をもとに、手術治療から、その他保存的治療まで他科と協力をしながら最も効果的とされるものを選択し行っている。アレルギーの診断においても、ガイドラインに定められた諸検査を施行し、総合的な判断のもとに方針を決定している。

症例数

08年度の総手術件数は367件、延べ入院患者数は10,148人、外来新患者数は1,457人、延べ受診数は13,449人であった。代表的手術の内訳は、鼓室・鼓膜形成術が11件、頭頸部悪性腫瘍については、上顎・副鼻腔悪性腫瘍13件、舌悪性腫瘍9件、咽頭悪性腫瘍13件、頸部悪性腫瘍4件、耳下腺悪性腫瘍6件、喉頭悪性腫瘍に対する喉頭全摘術が8件、部分切除が1件、甲状腺悪性腫瘍に対する甲状腺全摘術・部分切除術が3件であった。その他内視鏡下鼻副鼻腔手術が26件、口蓋扁桃摘出手術53件、いびきに対する咽頭形成術が2件であった。今後も外科的治療にて、生命予後が改善される、もしくは機能が高まると判断した症例には積極的に手術治療も取り入れていく予定である

★頭頸部悪性腫瘍の治療においては、手術療法・化学療法・放射線療法の3者を組み合わせ、各症例の生活の質(QOL : Quality of Life)を考慮に入れ、最も効果的な治療法を選択し、組み合わせて治療に臨んでいる。特に、耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域は術後の嚥下・構音機能を視野に入れた術中の機能再建やリハビリ訓練が重要である。このため、症例ごとに個人個人の問題点を考え、術式の選択・術後の嚥下・発声訓練を行っている

★慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎については、聴力評価は勿論のことであるが、その他画像・諸検査を行い、また個人の年齢や生活背景、既往歴を考慮した治療方針を組み立てている。また、めまいや中枢症状の出ている症例に対しては早期手術計画をとなっている

★慢性副鼻腔炎においては、通常の感染性タイプのものから、喘息を合併し治療に難渋しやすいタイプのものまで積極的に内視鏡下の手術治療を施行し、内服治療も並行することで、良好な術後経過をたどっている

★鼻アレルギーについては、通年性・スギ花粉症を含めて、免疫学的検査(抗原検索)、皮内反応テスト、鼻粘膜の過敏性確認を行い、診断を確定した上で、減感作療法・抗アレルギー薬の投与・周術療法を経過に応じて選択している

★睡眠時無呼吸症候群は、社会的にも、メタボリックシンドロームといった予防医学の点からも注目を浴びており、当科でも積極的に診断・治療に力を注いでいる。Nasal CPAP、手術療法、歯学部矯正科と相談の上での口腔内装具、精神神経科との相談の上での薬物療法等を選択肢として対処している。

医療設備

CT、MRI、RI、炭酸ガスレーザー、各種聴力検査機器、ABR(聴性脳幹反応検査)、各種めまい検査機器、各種アレルギー検査機セット、嗅覚・味覚検査機器、各種内視鏡、XPSドリル、手術用顕微鏡、エコー、簡易型終夜ポリグラフ検査、終夜ポリソムノグラフィー検査。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

口腔顎顔面外科

分野

歯科口腔外科

特色

鹿児島大学口腔顎顔面外科は、1981年の開設以来、口唇口蓋裂、口腔癌(舌癌・歯肉癌など)、顎変形症、顎骨嚢胞、顔面外傷、歯性感染症などの口腔顎顔面領域の疾患全般にわたって、地域の歯科医療を支える中核医療機関として発展してきた。その中で、口唇口蓋裂診療は“一貫治療”を実践する口唇口蓋裂診療センタ—の1つとして広く知られている。同様に、口腔癌治療と術後の摂食・嚥下障害、顎変形症、および口腔顔面慢性疼痛の領域においても専門診療班を編成し、科学的研究成果に裏打ちされた熟練スタッフによる高度の診療を実践している。

症例数

2008年の外来新患患者数は1,363人、入院手術件数は200件である。入院手術は口唇口蓋裂関連手術 87人、口腔癌手術 35人、顎骨腫瘍・嚢胞手術30人、顎変形症手術12人、その他である

口唇口蓋裂治療=開設当初から口唇口蓋裂の一貫治療に取り組み、優れた治療成績によりわが国屈指の口唇口蓋裂センターとして高い評価を受けている。現在、鹿児島県および宮崎県下の産婦人科で生まれた患者の多くが当科を受診し、2008年の口唇口蓋裂新患患者は51人、患児の出生当日に産婦人科に往診し、新生児の哺乳指導や家族へのカウンセリングなども行っている。治療は、院内の関連科とともに口唇口蓋裂専門外来を編成し治療に当たっている。その内容は、初診当日には哺乳指導、ホッツ型口蓋床(哺乳障害改善と術前顎形態改善のための口蓋閉鎖床)を作製し、外鼻の変形が高度な例では術前外鼻矯正装置(NAM)を開始する。生後3〜4カ月に初回口唇外鼻形成術、1歳6カ月に口蓋形成手術、4歳から歯科矯正科医による歯並びとかみ合わせの管理を行っている。9〜10歳時に顎裂部骨移植術、15〜17歳時に外科的矯正手術と口唇外鼻二次修正手術を基本的な流れとする

★口蓋裂患者の言語管理は、口蓋裂専門の言語聴覚士によって、生後から発達度チェック、聴覚検査などを行いながら、口蓋裂手術に臨む。口蓋裂手術後は1カ月から言語訓練を開始する。言語評価にあたっては、ナゾメーター(コンピュータによる鼻腔からの音響エネルギーの計測装置)、鼻咽腔内視鏡などを使った科学的な言語評価のもとに、個々の患者の病態に応じた言語治療を実践している。社会的な活動としては、2008年に患者家族と鹿児島大学病院口唇口蓋裂専門外来のスタッフが一緒になって口唇口蓋裂親の会「もみじ会」を再結成し、年に1度の学術講演会、交流会、屋外ピクニックなどを企画し、多くの患者ならびに家族が集まって有用な情報交換を行っている

口腔癌治療=当科における口腔癌の治療の特徴は、癌の集約的治療と術後の機能回復を目指すために専門分野の医師、歯科医師が協力したチーム医療の実践である。開設以来、治療を行ってきた悪性腫瘍患者は500例を超え、扁平上皮癌の治療成績(5年生存率)は、stage I:94.2%、Stage II:84.1%、Stage III:83.1%、およびStage IV:70.1%(根治術施行196例、2005年集計)である。口腔癌治療においては、高い根治率を求めるとともに、摂食嚥下機能や言語機能の回復を重要視している。そのために、専門診療班による口腔再建治療の向上を目指すと共に、歯科補綴科医(義歯を作成する)、言語聴覚士ならびに看護師らによって編成される摂食・嚥下チームによる“嚥下回診”の実践によって、患者個人にあった摂食・嚥下リハビリ計画と食事指導を行っている

顎変形症治療=顎変形症治療は、かみ合わせの異常や顎の変形を外科的に治す治療法の一つとして広く普及してきた。当科における顎変形症治療の特徴は、手術に伴う危険性を可能な限りなくす安全で、かつ術後のかみ合わせや容姿の安定性を求めた確実な治療を実践している。特に、約20年間積み重ねてきた顔面形態の三次元解析に関する研究実績を元に、外科的な顎骨移動に伴う顔面軟組織の変化を重要視し、近年では、発達著しいX線CT画像の三次元表示によるシミュレーション手術を導入するなど、硬組織と軟組織、咬合、顎骨および顔貌の調和のとれた治療を目指している

インプラント前外科治療=歯科インプラント治療は、歯周病や外傷などによる歯喪失に対して、再び豊かな食生活を楽しむことができるために人工歯根を用いた治療である。当科では、重度の骨欠損症例に対しても外科的に骨造成術を行うことで、安全かつ、長期間安定して使用できるインプラント治療を提供している。術前に顎骨のCT撮影を行い、インプラントシミュレーションソフトを用いてインプラント埋入部位の骨質や骨幅、高さなどを評価して、欠損の大きな症例には、感染症の危険性のない自家骨および精製骨補填剤を用いた骨造成術、サイナスリフトなどを行っている。

医療設備

鼻咽腔ファイバースコープ、ナゾメーター、顔面軟組織三次元解析装置、インプラントシミュレーションソフト、マイクロサージャリー用手術顕微鏡、舌運動解析超音波検査装置。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

口腔外科

分野

歯科口腔外科

特色

1980年4月の鹿児島大学歯学部附属病院の開設の母体となった鹿児島大学医学部附属病院歯科口腔外科の伝統を引き継ぐ唯一の診療科。口腔顎顔面領域に発生する先天的ならびに後天的疾患全般の診断と治療を行っている。特に舌癌や歯肉癌などの口腔癌、顎骨骨折などの顎顔面外傷、口唇口蓋裂、顎変形症、歯性感染症、口腔粘膜疾患、口腔領域嚢胞性疾患、顎関節症を中心とした基礎的研究や臨床的研究を行い、その成果を多くの関連学会で発表するとともに臨床にフィードバックしながら患者中心の口腔外科診療を行い、治療成績の向上に努めている。また歯科開業医との間に鹿児島県歯科病診連携システムを構築し、歯科口腔外科診療の質の向上に努力している。

症例数

2008年度の初診患者数1,401人、入院患者数238人、全身麻酔下手術件数142件、外来小手術件数1,254件。なお、口腔外科の入院ベッド数は20床で90%の稼働率である

口腔悪性腫瘍(口腔癌)=37人(同年入院)で、舌癌、歯肉癌、口底癌、頬粘膜癌、口蓋癌など個々の症例について生検時の病理組織学的悪性度、浸潤様式、TNM分類、stage分類ならびにCT、MRI、超音波検査(エコー)、PETなどの検査結果を毎週水曜日朝に行われる症例検討会で総合的に検討のうえ、治療法を決定している。原則として当科では、放射線科の協力を得て、手術前に抗癌剤(シスプラチン製剤)の超選択的動脈内注入法(Seldinger法)と放射線照射の併用療法を行ったのちに、腫瘍切除手術を施行している。切除後の組織欠損が大きい症例では、大胸筋皮弁による再建やマイクロサージャリー法を用いた前腕皮弁や腹直筋皮弁による再建も行い、術後の咀嚼、嚥下機能の回復を図っている。当科での5年累積生存率(Kaplan-Meier法、すべての他因死を含む)は、stageI 88%、II 78%、III 72%、IV 67%と生存率の向上を得ている。一方、口腔領域の良性腫瘍は、2008年度初診53人で、エナメル上皮腫や歯牙腫などの歯原性腫瘍を中心に種々の良性腫瘍の治療を行っている。なかでも、エナメル上皮腫などの治療は、可及的に形態と機能を温存した開窓、摘出などの縮小手術を行い好結果を得ている

顎変形症=42人(同年入院)の外科的矯正手術を行っている。骨格型下顎前突症や開咬症、上顎劣成長による下顎前突症、顔面非対称症など顎変形症の患者の場合、手術を伴う顎変形症の術前、術後の矯正治療も口唇口蓋裂の矯正治療と同じように健康保険の適用となったことや、顔(口腔外)に傷を付けずに口腔内から手術する安全な手術法(Obwegeser法)などが開発されたことにより、近年、矯正専門開業医からの紹介患者が増加している。外科的矯正手術時には術中の出血に備えて術前に自分の血液を貯血しておく自己血輸血が全症例に実施されている

顎顔面外傷=56人(同年初診)、子供が転んで舌を咬んだり、くわえていた箸が頬に刺さったなどの舌や頬などの軟組織の外傷、スポーツやけんかなどによる歯の脱臼、交通事故での顎骨骨折などがあり、2008年度には8人が入院。顎骨骨折に対しては、かみ合わせ(咬合)を基準にしたチタンミニプレートによる観血的整復・固定術を行っている

口唇口蓋裂=10人(同年初診)、ホッツ口蓋床を用いた顎発育誘導法を応用し、生後3カ月時に全身麻酔下の三角弁法による口唇形成術、1歳半時にpush-back法による口蓋形成術、8歳前後に顎裂部骨移植、二次成長後の鼻修正術など矯正科や言語療法士などとの一貫したチームアプローチによる治療を行っている。なお、毎年、当科の歯科医師が口唇口蓋裂協会からミャンマーに2週間出張し、口唇口蓋裂の手術指導を行っている

顎関節症=146人(同年初診)、近年、10~20歳代の女性を中心に増加傾向の著明な疾患で、口を開けると顎の関節で音がする、食事時に顎の関節や頬の筋肉が痛い、口が開きにくいなどの症状からなる疾患である。その治療は、院内に複数の診療科による専門外来を設けて薬物療法、理学療法、スプリント療法、円板整位運動療法、徒手的円板整位術、パンピングマニピュレーションなどの保存的治療を主体に行い、好成績を得ている

口腔感染症=103人(同年初診)、35人(同年入院)、虫歯や歯周疾患は口腔内常在菌の一部が原因の感染症であるので、口腔顎顔面領域には虫歯や歯周疾患からの感染症、すなわち蜂窩織炎や顎骨骨髄炎などが好発する。近年、糖尿病などの全身疾患を合併したガス産生蜂窩織炎や顎骨骨髄炎の重症例が増加傾向にあるが、救急部と連携し高気圧酸素療法などの併用により好結果を得ている

口腔粘膜疾患=160人(同年初診)、口腔粘膜にはアフタ性口内炎をはじめ、扁平苔癬、尋常性天疱瘡などの皮膚科的疾患やヘルペス性歯肉口内炎、口唇ヘルペス、帯状疱疹などのウイルス感染症、褥瘡性潰瘍などの外傷性疾患、白板症や紅板症などの前癌病変、口腔カンジダ症などの真菌感染症、メラニン色素の異常沈着症など多種多様な病変が発生するので、これらの疾患の診断、発生機序に関する基礎的研究、治療法の研究を行っている

口腔領域の嚢胞性疾患=68人(同年初診)、口腔領域には歯根嚢胞、含歯性嚢胞、原始性嚢胞など歯の発生と関連して顎骨内に発生する嚢胞をはじめ、術後性上顎嚢胞、顔裂性嚢胞、ガマ腫、類皮嚢胞、粘液貯留嚢胞など多種の嚢胞が発生する。治療は摘出術や開窓術が行われる

歯牙歯周疾患=659人(同年初診)、外来小手術の大部分を占めるのは、開業医から紹介された埋伏智歯(親知らず)や埋伏過剰歯の抜歯である。その他、歯根嚢胞に対する歯根端切除術、小さな良性腫瘍の切除術、膿瘍の切開、排膿術などが行われている

口腔領域の神経疾患=37人(同年初診)、口腔領域には、三叉神経痛、顔面神経麻痺などの神経疾患も発生し、当科でも歯科麻酔科と共同で神経ブロック、薬物療法、レーザー治療などを行っている。

医療設備

MRI、CT、エコー、RI、DSA(血管造影)、マイクロサージャリー用手術顕微鏡、レーザーメス(炭酸ガス、ヤグ)などを完備している。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

糖尿病・内分泌内科

分野

糖尿病内分泌内科

特色

特定機能病院としてあらゆる診療科と設備を有する利点を生かし、各科との連携をもとに最良の医療を提供することを目標としている。また、内分泌代謝領域の地域中核病院として、関連病院との連携を通じて地域医療への貢献に努めている。さらに、日本糖尿病学会の認定教育施設および内分泌専門施設として専門医や療養指導士を育成している。

症例数

年間外来登録患者数は約1,500人。内訳は糖尿病約50%、甲状腺疾患約40%、下垂体・副腎疾患約10%である。外来診療においては、受診日に検査データの説明をすることを基本とし、電話での結果説明も行っている。また、栄養管理室と提携して外来レベルでの栄養指導を積極的に行っている。年間入院患者は約100人で、疾患の比率は外来患者とほぼ同じである。病棟診療においては専門医を中心にチームを組み、毎週1回症例の検討を行い、個々の患者の病態に即した治療ができる体制を整えている。また、内分泌・代謝領域の疾患毎のクリニカルパスを作成し、検査および治療が適切かつスムーズに行われるよう心掛け、平均在院日数の短縮に努めている

糖尿病=定期的に通院中の糖尿病患者は約650人である。割合は2型糖尿病がほとんどであるが、1型糖尿病患者も10%程度通院している。初診例、血糖コントロール不良例においては教育入院を積極的に行い、食事療法の教育や見直しを中心に治療を行っている。糖尿病教室は看護師・栄養士と協力して毎週1回開催し、糖尿病の概念・診断・治療(医師)、栄養指導(栄養士)、メンタルケア(看護師)などを中心に、講義・討論を行っている。特別に教育を中心とした2泊3日の短期入院を設け、期間中に糖尿病教室を2回開催している。重症合併症を持つ患者の治療も、他科との連携のもと常時開催している。特に、心臓血管内科と緊密に連携し、糖尿病患者で発症の多い虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)に対しては、心臓カテーテル検査による診断と冠動脈形成術(PCI)を常時行っている。さらに、狭心症や心筋梗塞で入院後に糖尿病と診断された患者、眼科・外科に入院中の糖尿病患者の治療にも積極的に関わっている。糖尿病網膜症は当院眼科との連携により、適切な時期に治療(光凝固、硝子体手術など)ができるよう努めている。動脈硬化症の早期発見のための血管エコー検査や脈波伝播速度測定、神経障害の早期発見のための各種神経機能検査も実施している。社会的活動としては、3泊4日の小児糖尿病サマーキャンプを年1回開催しており、医師、コメディカル・スタッフやOB、OGと患児との交流の場として有意義なものとなっている。糖尿病療養指導士の育成のための講演会にも毎年講師を派遣し、コメディカル・スタッフの養成にも貢献している

内分泌疾患=甲状腺・副甲状腺領域ではバセドウ病、慢性甲状腺炎(橋本病)が多数を占めるが、亜急性甲状腺炎、甲状腺腫瘍、原発性副甲状腺機能亢進症などの症例も診療している。バセドウ病の治療は抗甲状腺薬が主であるが、薬物に抵抗性を示すものや副作用のあるものは、当院放射線科や内分泌外科に依頼して放射線療法や手術も行っている。外来診療にて甲状腺超音波診断および穿刺吸引細胞診を常時施行し、外科治療の適応症例については当院内分泌外科に依頼している。甲状腺疾患研究会を毎年開催し、地域医療レベルの向上に貢献している

★下垂体疾患ではクッシング病、先端肥大症、プロラクチン産生腫瘍、尿崩症、下垂体機能低下症などの症例、副腎疾患ではクッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、副腎皮質機能不全などを診療している。最近は副腎偶発腫の紹介も増えている。負荷試験を含めた内分泌学的検査、放射線科と提携してCT・MRIなどの画像診断やカテーテル検査(造影・サンプリングなど)を行っている。外科的治療は、下垂体疾患は当院脳神経外科、副腎腫瘍は当院泌尿器科(腹腔鏡による手術)に依頼している。

医療設備

超音波、CT、MRI、アンギオグラフィ、シンチグラフィ。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

血液・内分泌・糖尿病センター血液膠原病内科

分野

血液内科

特色

2003年10月より鹿児島大学病院、血液・糖尿病・内分泌センター血液膠原病内科分野として診療及び研究を行っている。血液疾患については造血器悪性腫瘍を中心に、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、特発性血小板減少性紫斑病、血友病等、広範囲にわたる疾患の診療・研究を担当しており、治療においてはエビデンスに基づいた最新の化学療法や造血幹細胞移植療法(自己末梢血幹細胞移植や同種骨髄移植、ミニ移植など)を積極的に行っている。また、当地域で多く発症の見られる成人T細胞白血病(ATL)については、特に力を入れて診療・研究にあたっている。膠原病についても、鹿児島県の専門医療センターとして最先端の医療を行うように努めており、膠原病類縁疾患を含めた幅広い診療を行っている。日本血液学会認定血液研修施設、日本臨床腫瘍学会認定施設、日本リウマチ学会教育施設。

症例数

2008年度の年間外来受診患者数は延べ1,0278名を数える。内訳は、そのおよそ6割が血液疾患である。急性及び慢性白血病、悪性リンパ腫やATL、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群や特発性血小板減少性紫斑病などの診療を担当しており、外来での化学療法も積極的に導入している。残りおよそ4割を膠原病が占め、関節リウマチや全身性エリテマトーデス等の膠原病疾患の他、ベーチェット病や各種血管炎症候群等の膠原病類縁疾患に対する診療を行っている。入院病床数については15 -20床であるが、今村病院血液内科や国立病院機構鹿児島医療センターの血液内科とも協力して、円滑に治療が遂行できるよう努めている

★急性白血病については、JALSG(日本成人白血病研究グループ)の参加施設であり、また悪性リンパ腫についてはJCOG(日本臨床腫瘍治療グループ)の参加施設であり、いずれもその水準での治療を行っている。多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群に対しても、病態や患者状態に応じて最新の治療を含めた化学療法や造血幹細胞移植療法を積極的に施行し、良好な成績を維持している。2008年度は6例の造血幹細胞移植を行った。その他には、分子標的療法の症例も増加しており、B細胞悪性腫瘍に対する抗CD20抗体療法とともに2009年度より放射性同位元素結合抗CD20抗体(ゼバリン)などを用いた先端医療を行っている。また多発性骨髄腫に対するボルテゾミブ療法等を行っている

★膠原病及びその類縁疾患に対しては、その病態・病勢に応じてステロイド剤や免疫抑制剤、抗リウマチ薬を使用する他、抗TNF-α抗体や抗IL-6受容体抗体等の生物学的製剤も積極的に導入し、全身疾患ゆえ他科との密接な連携の下、最善の治療を行うよう努めており、治療成績も良好である。

医療設備

特定機能病院として、血液・膠原病疾患の診断及び治療に必要な施設は殆ど整っている。完全無菌室1部屋、準無菌大部屋1室、簡易無菌ベッド6床、血液成分分離装置、CD34分離装置、放射線治療設備等。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

脳神経外科

分野

脳神経外科

特色

特に、専門とするのは脳腫瘍で、脳腫瘍の手術症例数は常に全国10位以内であり、2007年度の脳腫瘍手術症例数は九州でトップであった。鹿児島大学脳神経外科は日本脳神経外科学会訓練施設、日本脳卒中学会認定研修教育施設、日本てんかん学会訓練施設となっている。脳外科が対象とする疾患は脳腫瘍、脳血管障害、てんかん、痛み、パーキンソン病まで、非常に広い分野に及んでいるため、一人の脳外科医がすべてカバーすることは出来ない。鹿児島大学脳外科のスタッフは全員が脳神経外科専門医であるのみならず、日本脳卒中学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本てんかん学会認定医、日本救急医学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医などの資格を有しており、それぞれの専門性を生かしながら、チーム医療で多岐にわたり複雑化する脳外科疾患を治療している。治療にあったては、患者さんとの意思疎通、情報の共有を大切にしており、患者さんの希望を良く聞き、無理な手術は避けている。患者さんにとって生涯にわたる大切な資料である術中ビデオ(DVD)は希望する患者さん全てに差し上げている。

症例数

2008年度の全手術数は326件。脳腫瘍手術件数は193件(グリオーマ、下垂体腫瘍、聴神経腫瘍、髄膜腫、小児脳腫瘍など)。下垂体部腫瘍に対する経蝶形骨手術は約54件。鹿児島大学脳血管内手術チームよる血管内手術は約70件

悪性脳腫瘍(グリオーマなど)=平野宏文講師を中心に全国でも有数の症例を治療している。2008年のグリオーマの手術数は61件。鹿児島大学脳神経外科には3名のがん治療認定医を擁している。グリオーマの治療では、FDG-PET、メチオニン-PETの所見を参考に、術中ナビゲーションを使用しながら腫瘍摘出度を高めている。2009年10月から導入された術中MRIによって、手術の安全性と摘出度が更に向上することが期待される。現在薬物療法の中心となっているテモゾロミドは、保険収載になる数年前からの治験の経験を有している。また、放射線治療ではサイバーナイフも併用して、早期社会復帰と患者さんの長期的なQOLを高める努力をしている。初期治療後も、患者さんが安心して暮らせるように5年、10年という長期の経過観察を心がけている

下垂体腫瘍=有田和徳教授が特に専門としている。これまでに600例以上の手術経験を有する。15年以上前から、経鼻手術と内視鏡手術を導入している。これまでに手術による重大な合併症を経験していない。先端巨大症、クッシング病、プロラクチン産生腺腫などの機能性下垂体腺腫の治癒・寛解率は7-8割

聴神経腫瘍=鍵穴(キーホール)手術とガンマナイフ、それぞれの利点を生かし、患者さんのQOLを重視した治療を行っている

髄膜腫=頭蓋底外科の技術を利用して、脳への障害を最小に抑えるように配慮しながら、根治と腫瘍の長期的なコントロールを目指している。サイバーナイフ、ガンマナイフも駆使している

小児脳腫瘍=髄芽腫、上衣腫、グリオーマなどの小児脳腫瘍に対しては、手術、放射線治療、抗癌剤を組み合わせて、腫瘍の長期的コントロールと患児のQOLの改善を追求している。抗癌剤治療は化学療法の経験が豊かな小児科チームと共同で実施している

脳血管障害=未破裂動脈瘤は、症例毎に血管内手術と開頭クリッピング手術それぞれの長所が生かせるように治療法を選択して、良好な成績をあげている。内頚動脈狭窄症に対しては、既に200件以上のステント術を実施しており、重篤な合併症は0.5%

てんかん=長時間脳波ビデオモニタリング、SPECT、PET、脳磁図などのデータを総合して、てんかん焦点の探索を行い、薬物によるコントロールが難しいてんかんの消失を目指している

三叉神経痛、顔面痙攣、舌咽神経痛、パーキンソン病などの疾患に対する機能脳神経外科=三叉神経痛や顔面けいれんに対しては患者さんの負担の少ない鍵穴手術で、80%以上の根治を達成している

脳室内腫瘍=日本神経内視鏡学会技術認定医である平野宏文講師を中心に神経内視鏡を用いた非侵襲的な治療を行っている。

医療設備

術中MRI(全国で五台目)、手術用ナビゲーションシステム2台、3.0テスラMRI、1.5テスラMRI、64列3D-CT、SPECT、脳血管内手術用DSA、手術用超音波断層診断装置、超音波手術装置、定位脳手術装置を有する。PETは2010年に設置予定、関連病院にガンマナイフ、サイバーナイフ、PET、脳磁計(MEG)を有する。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

乳腺・内分泌外科

分野

乳腺・内分泌外科

特色

進行度に基づいたオーダーメイドの治療を基本とし、1例1例に全割の病理組織学的マッピングを作成し、術前診断へのフィードバック、術後補助療法の選択、再発形式の予測のための重要なデータとして重視している。最近のテーマとして、乳癌手術には一期的再建を付加する乳房温存術の工夫と、センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清の省略を、甲状腺手術では頸部に創を残さない内視鏡手術を積極的に実施。大半を占める女性患者さんの整容性・QOLと根治性の双方を確保することを基本的診療姿勢とし、一方、大学病院の役割・使命として常に最新の治療法を一般病院や地域社会へ教育・還元し、臨床技術指導を行っている。

症例数

最近10年間における原発性乳癌は357例で、うち遠隔転移がなく根治手術がなされたのは336例である。根治切除の内訳は乳房切除が204例、乳房温存術が133例で温存率は40%、センチネルリンパ節生検による腋窩郭清省略は84例(25%)である。根治切除336例の組織学的進行度は0期が37例(11%)、I期が121例(36%)、II期が114例(34%)、III期が64例(19%)で、5年健存(無再発)率はそれぞれ100%、94%、88%、59%である。根治性を最重点に、腋窩リンパ節郭清を伴う胸筋温存乳房切除と乳房円状部分切除を標準術式としているが、2cm以下で超音波検査等の術前画像でリンパ節転移の無い症例については、RIを用いたセンチネルリンパ節生検を行い、術中PCRを含めた病理検索で転移が無い場合は腋窩郭清を省略している

★甲状腺・副甲状腺手術に関して、2004年~2008年の5年間に甲状腺癌164例、甲状腺良性腫瘍52例、バセドウ病18例、副甲状腺腫瘍21例を行った。局所進行甲状腺癌では、気管合併切除に鎖骨骨膜弁を用いた一期的気管再建を行い、良好な成績を得ている。また、甲状腺良性腫瘍、バセドウ病、副甲状腺腫瘍に対しては内視鏡手術を導入し、現在内視鏡手術も100例を超えている。

医療設備

MMG、US、シンチグラフィ、MRI、CT、ガンマプローブ、放射線治療装置。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

放射線科

分野

放射線科

特色

コンピューターを用いた一般X線撮影、X線コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴断層撮影(MRI)、アイソトープ断層撮影(SPECT)、血管造影などによる画像診断全般を行っている。また治療に関しては、体外や体内から照射する放射線治療やカテーテルを使用した血管造影手技や画像診断手技を用いたinterventional radiology(IVR)を中心とした癌の治療全般を行っている。肺癌や肝臓、胆管系の癌、進行乳癌の治療は放射線治療のほか、化学療法、温熱療法、抗癌剤動注療法、動脈塞栓術、ステント治療、リザーバー植え込みなど患者さんにとって最適の治療法を組み合わせて行っている。術後甲状腺癌の転移やバセドウ病、骨転移癌、悪性リンパ腫のアイソトープ治療も行っている。

症例数

入院患者数は年間約300人で、進行した肺癌、原発性肝癌、転移性肝癌、転移性骨腫瘍、胆道系癌、進行乳癌、副腎腫瘍、甲状腺癌、バセドウ病などの患者さんが多い

★予後の短い患者さんに対してはQOLを重視した対症療法を行っている。特に転移性骨腫瘍による疼痛の緩和では、放射線治療で2週間以内に9割の患者さんの疼痛緩和が得られ、また適応のある患者さんにアイソトープ(Sr-89)による除痛療法も行っている。さらに骨転移の即時的除痛や骨折防止としての骨セメント療法も適応のある患者さんには行っている

★術後甲状腺癌の転移に対するアイソトープ治療は年間50例ほどである。甲状腺機能亢進症の一つであるバセドウ病のアイソトープ治療は、米国では約7割の患者さんがアイソトープ治療を最初から受けるが、日本では抗甲状腺薬による治療が9割を占める。当科ではこの内科的治療で副作用のでた患者さんに対し、年間10人程度の治療を、厳密な線量計算に基づいて行い、2~3カ月以内の甲状腺機能の正常化と100%の完治と甲状腺機能低下症の発生を防止するよう努めており、現在まで約110人治療し、良好な成績を得ている

★放射線科医は放射線科の業務のみでなく、中央診療施設である放射線部の仕事も兼務し、診断と治療を行っている。すなわちCTを用いた画像診断は年間約11,000件で、頭部から骨盤部のほぼ全身をカバーしている。MRIを用いた画像診断もCTと同様で、全身をカバーし、年間約5,400件である。核医学診断(アイソトープ検査)は全身臓器の癌、脳、心臓、骨、甲状腺や副腎などの検査が多く、年間約2,500件である。また癌のFDG PET、PET/CT検査に関しては、関連病院である鹿児島市の厚地記念クリニックや南風病院、都城市の藤元早鈴病院に患者さんを紹介し、癌の質的診断や転移や広がりの診断を行っている。抗癌剤と併用した放射線治療は年間約500人である。最近はコンピューター制御によるXナイフなどの手術に匹敵する治療を適応のある転移性脳腫瘍や肺癌に行っており、またIr-192から出るガンマ線による子宮頸癌などの管腔臓器の腔内治療、I-125シードによる前立腺癌の治療も行っている。最近は切除不能肺癌に対してラジオ波焼却療法や進行肝癌に対しリザーバーを留置して繰り返しの動注療法も積極的に行っている。

医療設備

MRI、ヘリカルCT、SPECT装置、リニアック、温熱治療装置、血管造影装置など。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

麻酔科蘇生科・ペインクリニック

分野

ペインクリニック

特色

県内唯一の大学病院の麻酔科疼痛治療部門として、各種痛みに対する専門的診療を行っている。まず患者の訴えに十分耳を傾けることから始め、治療法として何が最適かを常に考えるようにしている。ペインクリニックで頻用する神経ブロックに限らず各種鎮痛薬の使用、非侵襲的治療法も取り入れて診療を行い、総合病院の特色を生かしてリハビリテーション科、心身医療科など、他科との連携も大切にしている。

症例数

他科入院患者で当科治療を受けている患者を含めて、外来治療の患者数は1日約30人、新患者数は1年間で300人である。約50%は院内他科からの紹介患者である

★当科で扱う疾患で多いものは、頸肩上肢痛、腰下肢痛、帯状疱疹による痛み、頭痛、顔面痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺、種々の血管障害に伴う痛み、神経の傷害による痛み(外傷・手術後などに不自然に続く痛み、帯状疱疹後神経痛など)、各種癌に伴う痛みである

★治療は神経ブロック療法やトリガーポイント注射、薬物の内服・点滴療法などを主とし、スーパーライザーやキセノン光線治療器などを併用して行っている。神経ブロックは硬膜外ブロックや星状神経節ブロック、各種末梢神経ブロックを中心とし、透視装置が必要なブロックは中央放射線部と中央手術室で行っている。難治性の神経傷害性の痛みなどに脊髄電気刺激療法を行うこともある。また各種鎮痛薬を試験的に使用することも多い。

医療設備

外来では神経ブロック用ベッド10台、病棟では専用入院ベッド3床。スーパーライザー、キセノン光線治療器などの各種治療器、サーモグラフィーなど。

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