[関節症性乾癬] 2016/06/09[木]

 これまでの特集では乾癬が患者さんの日々の生活、仕事や学業に大きな影響を与えること、そして乾癬の中でも特に注意すべき関節症性乾癬が見逃されやすい疾患であることをエキスパートの先生方に教えていただきました。
 全3回シリーズの最終回である今回は、これまで多くの乾癬患者さんを診察されてきた皮膚科、そしてリウマチ内科の先生からそれぞれの診療科から見る乾癬、関節症性乾癬についてお話を伺いました。

皮膚科の視点から

聖母病院皮膚科 部長
小林里実先生

リウマチ内科の視点から

東京女子医科大学附属
膠原病リウマチ痛風センター
膠原病リウマチ内科 教授
谷口敦夫先生

皮膚科・リウマチ内科それぞれの診療科における関節症性乾癬診療への取り組みは?

皮膚科の視点から
早期に関節症性乾癬を見つけ出せるよう日々の診療で気を付けています。

 皮膚科の中でも乾癬(写真1)は慢性疾患ということもあり、長年苦労されている患者さんが多い疾患です。温泉やプールといったレジャーはもちろん、営業の仕事をされている方であれば、名刺を出す際に手の症状を見られるのが嫌で仕事に支障が出たり、頭皮に症状がある場合、美容院に行くのも憚られ、長年、自宅で髪を切っているという患者さんもいます。この皮膚症状に加えて関節症性乾癬を発症し手足や腰が痛くなれば、さらに日常生活に著しい制限がかかることになります。

写真1:乾癬の症状

 皮膚科医としては患者さんが関節症状によってQOL(生活の質)がさらに下がったり、関節が元に戻らないくらいのダメージを受ける前に、早期に関節症性乾癬を見つけ出せるよう日々の診療で気を付けています。最近では問診に加えて、外来の待ち時間でPEST(図1)のような患者さん自身が簡単に答えられる質問票も活用するなどして早期発見に努めています。これは、患者さんが関節症状について知る機会にもつながります。

図1:PEST質問票

リウマチ内科の視点から
関節破壊を早期に引き起こす病気として、
医師の間でも関心が高まっています

写真2:関節破壊が進行した例

 リウマチ科、整形外科でも、関節症性乾癬の診療を行っています。以前は、一般の医師や患者さんの間で、この病気に対する認識が低かった為、関節症状と皮膚症状が、別々の疾患によるものとして、長年治療を受けられてきた患者さんも少なくありません。

 また、関節症性乾癬は、関節リウマチなどと比べると炎症の度合いがそれほど強くない疾患として過小評価されるという風潮もありました。しかし、最近では治療が難しい皮膚症状に加えて、手足の指の痛みや腫れ、さらに関節リウマチと同様に不可逆的な(元に戻らない)関節破壊を早期に引き起こす重大な疾患として関節疾患を専門とする我々リウマチ医や整形外科医の間でも関心が高まっています。(写真2)

関節症性乾癬の診療における特徴は?

皮膚科の視点から
メタボを合併する割合が高い乾癬患者さん
食事や運動など生活習慣を見直すことも大切

 近年、乾癬は皮膚症状に加えて、体の様々な部分で炎症が起こる「全身性の炎症性疾患」であるという考え方が一般的になっています。例えば乾癬の患者さんはメタボリックシンドロームの合併率が高く、心血管系の疾患(脳梗塞・心筋梗塞など)を引き起こすリスクが高いと言われています。そして、脂肪細胞から産生される物質が炎症を引き起こすことが分かってきました。体重と身長の関係から肥満度を示す指標であるBMI[体重(kg)/身長(m)2]が高いと、乾癬の症状が悪化したり、関節症性乾癬の発症率が高くなるという報告もありますので、食事や運動など基本的な生活習慣を見直していただきます。さらに、高血圧や高脂血症、糖尿病などの病気がある患者さんは、専門医による治療に加えて、栄養指導をすすめる場合もあります。

リウマチ内科の視点から
複数の診療科が携わる
トータルマネジメントが必要な病気

 関節症性乾癬と同じく免疫の異常が原因となるクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患*1や炎症性の眼疾患など関節以外にも身体のあらゆる部分に合併症が現れる場合があります。近年、医療はそれぞれの分野で専門性を高める方向になっていますが、関節症性乾癬は場合によっては1人の患者さんに対して、複数の診療科が携わる必要がある病気と言えるでしょう。

*1炎症性腸疾患・・・腸管の免疫異常が原因で、頻回の下痢、直腸からの出血、痙攣性の腹痛などを引き起こします。代表的なものにクローン病や潰瘍性大腸炎があり、それらは国の指定難病に定められています。

関節症性乾癬になりやすいタイプとは?

皮膚科の視点から
爪などの部位に症状があると
関節症性乾癬にも注意すべきと言われています

 爪・頭部・おしり/肛門周囲に乾癬の症状がある方に関節症性乾癬が多いという報告があります。特に爪乾癬(写真3)に関しては、関節症性乾癬との関連が強い症状だといわれています。また、皮膚症状がごくわずかでも関節症状を伴う患者さんは少なくない点にも注意が必要です。

写真3:爪乾癬の例

リウマチ内科の視点から
関節症状が先に起こることで、
皮膚症状に気がつきにくいケースもあります

図2:関節症性乾癬の発症パターン

 関節症性乾癬は関節症状よりも皮膚症状が先に起こるケースが多いのですが、逆に関節症状が起こってから皮膚症状を発症することもあります(図2)。関節リウマチを診断する目安の1つに、「リウマトイド因子*2が陽性である」というものがあり、実際関節リウマチの患者さんの約7~8割が陽性であるといわれています。一方で関節症性乾癬の患者さんではリウマトイド因子陽性の方は稀で、鑑別のひとつの目安となります。関節症性乾癬と関節リウマチでは関節の症状に違いがあることが分かってきました。また、これまで関節リウマチと診断されていた方の皮膚をよく観察すると、乾癬の典型的な症状である頭部や爪の乾癬がみつかり、関節症性乾癬と診断されたケースもあるようです。このような例もありますので、リウマチなど関節疾患で通院中の患者さんご自身でも一度、最近フケが多くないか、普段はあまり気にしない膝や肘、おしりなど擦れやすいところに湿疹のようなものはないか確かめてみてはいかがでしょうか。

*2リウマトイド因子・・・関節リウマチ患者さんの多くで見られる血液中のタンパク質です。

関節症性乾癬の最近の治療は?

皮膚科の視点から
近年、治療の選択肢が増えています。
気になる症状のある方は医師に相談することをおすすめします

 数年前に比べると有効性の高い治療の選択肢が増えたこともあり、関節症性乾癬を見逃さず、なるべく早期に適切な治療を開始しようという意識は確実に高まっています。日本皮膚科学会でも関節症性乾癬については、日常生活に支障が出る前に、生物学的製剤の早期使用を考慮することが推奨され、その使用について「生物学的製剤承認施設(平成28年2月16日時点で全国552施設)」を定めています。
実際の治療は患者さんの状態や既往歴に加え、ライフスタイルや経済状況も考慮して、適した治療を組み立てていきます。関節症状に対しては、痛み止めや免疫抑制剤などの飲み薬や生物学的製剤を、皮膚症状に対しては、塗り薬や光線療法のほか、皮疹に効果の高い飲み薬があります。同時に行えない治療もありますので、まずは気になる症状を医師に相談し、話し合いながら治療に臨んでいただきたいと思います。

リウマチ内科の視点から
関節症性乾癬は
研究も活発で治療が進歩しています

 関節症性乾癬は様々な症状を引き起こす病気ですが、最近ではこれらの症状に合わせた治療指針も出され、研究も活発で治療が進歩しています。
また、最近、患者さんが、関節症性乾癬の情報を詳しく知ることが出来るウェブサイトも開設されています。これまでなかなか病気についての情報を得ることが難しかった関節症性乾癬ですが、診断方法や治療の進歩とともに少しずつ色々な情報を得られるようになってきています。

提供:アッヴィ合同会社

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