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[クリニックインタビュー] 2010/03/26[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第60回
西城耳鼻咽喉科アレルギー科
西城隆一郎先生

耳鼻科ならクリニックでも、病院に近いレベルの治療ができる

saijyo_clinic01.jpg 僕は、祖父と伯父が開業医、父が歯科医という家庭に育ったので、自然と医療の道に進みました。他の職業を身近に知っていたわけでなく、あまり社会のしくみを難しく考えたこともなかったものですから(笑)。
 それも大学に残ったり研究者になったりするつもりはなく、「開業医」になるイメージしかなかったですね。笑い話があって、学生時代、病院実習の初日、「先生は昼からは何をしているのですか?」と質問したんです。病院の外来って、昼で終わりじゃないですか。「開業医は一日中仕事をするのに、なぜ大学病院では午前中しか患者さんを診ないのか」と思ったんですね。まさか午前の外来の後に、深夜まで続く病棟業務があるとは知らなかった。それくらい「開業医としての医師」像しか知らなかったのです。
 耳鼻科を選んだのは、一日でも早く「開業医として世に貢献したい」と思っていたから。耳鼻科は、クリニックを開業しても病院に近いレベルのことができます。例えば手術するにも外科は1人では大変ですが、耳鼻科ならある程度は可能なんです。

患者ニーズが高まっている分野で強くなりたい


大切に保管されている患者さんからの手紙。

 郷里の三重なら地盤もあって開業しやすかったのですが、「自分の力を試してみたい」という気持ちがあって、誰も知り合いがいないこの地を選びました。そのぶん「患者さんニーズ」を客観視する癖がついたと思います。7年ほど前に、「アレルギー性鼻炎」の患者さんと、「難治性中耳炎」の患者さんが、すごく増えていると感じ始めました。難治性中耳炎の増加は、集団保育の増加に伴って増えています。昔に比べて保育園に預けられる子供が増え、免疫力が弱い時期に多くの乳幼児が狭い空間で生活するようになったため、感染例が増えたと僕は考えています。
 どうせなら患者さんが増えている領域で強くなりたいと、この両分野には、開業前から力を入れて勉強しました。結果として今、僕のところでは、「重症アレルギー性鼻炎に対するアルゴンプラズマ療法」や「難治性中耳炎に対する鼓膜切開」の症例が、年間あわせて400から600くらいと多くなっています。アルゴンプラズマ療法というのは、薬で治療をしても鼻づまりが治らない患者さんに対する手術ですが、鼻のなかの下鼻甲介というところの粘膜を高周波電流で焼いて変性させ、腫(は)れを縮小します。面で焼くので、レーザー治療に比べて短時間で済むし、部位を均質に治療できるという優位性があります。「鼓膜切開」に関しては、一時期は抗生剤が発達して「中耳炎は薬だけで治る」と言われたのですが、最近は、耐性菌の出現や難治性症例の増加で再び手術が重視され始めています。

「開業医には休みなし」と言っていた祖父

 最初から「日曜日にも診察しよう」と決めていましたね。ひとつは郷里で開業していた祖父や伯父が日曜診療して、患者さんから喜ばれていたのを知っていたからです。祖父は「開業医には休みなし」とよく言っていました。それに、開業前に近隣医院の状況を調べたら、日曜にも開いているところは当時ほとんどゼロでしたから、「週末に医者に行きたい人は、さぞ困っているだろう」と考えて、地域貢献的にも日曜診療をやる必要があると思いました。
 でも、最初の日曜日はがっかりしました、2人しか患者さん来なかったですから!暇でしょうがない。「これで大丈夫かな」と心配になりましたが、半年を過ぎた頃から土日はいっぱいになりました。一人で診ることのできる患者さんの数には限りがあるので、土日に初診した患者さんが次に平日に通院してくださると、理想ですが、どうしても土日に来た人は土日にしか来院できない場合が多いようです。患者さんの都合ですから仕方ないですけれど。

患者さんの「見えない不安」に心を砕く


イラストの上に描いて説明。

耳の中のスコープ映像。

 耳鼻科の患者さんは、お子さんが中心です。泣いて症状を正確に表現できない子も多いし、耳の奥は患部が見えないから、親御さんは心配ばかりしてしまいます。「後遺症で耳が聴こえなくなったらどうしようか」とね。こうした「見えないことへの不安」は、医者が想像するよりもはるかに大きな不安です。だから僕は、なるべく「見せる」ことを心がけています。ご希望に応じて病変部位をモニターでお見せします。自分の病気を目で見て理解することは、よりよい治療の第一歩ですから。
 あとは、「なるべく薬を使わない」「なるべく通院回数を減らす」治療を心がけています。先に紹介した2つの手術も、そうした考えに基づいて積極的に行っています。耳鼻科というと、何度も通院して慢性的に薬を使い続けなければならない、というイメージがありますが、それを変えていきたいですね。
 さらには「きちんと診断をつける」「きちんと説明をする」も大事です。どちらも当たり前のことですが、適当に診て「とりあえずネブライザーを」と流れ作業する耳鼻科医にはなりたくない。原因を早く突きとめ、患者さんにも納得してもらうことで、薬の量や通院回数が減ります。混み合っている時間帯は充分な説明も難しいですが、平日の午前中で時間があれば、きちんと説明するように心がけています。

自分の時間も大事にしながら、地域医療に貢献

 開業以来、5年間休みなく働きづめでしたが、だんだん夜遅くまで長く仕事するのが肉体的にもきつくなってきました。特に昼間に患者さんが多い日はね。
 もっと若い先生に、ハードワークはお任せして(笑)、これからは少し自分の時間も持つようにしたいと思います。まずは5年間でたまった書類や雑務の整理をしてシンプルな生活を取り戻そうと思っています。

取材・文/QLife

西城耳鼻咽喉科アレルギー科

医院ホームページ:http://www.saijo-enta.com/
saijyo_clinic_b01.jpg saijyo_clinic_b02.jpg saijyo_clinic_b03.jpg
小田急成城学園前駅から徒歩1分。詳しい道案内は医院ホームページから。待合室、診療室の南側が全面ガラス貼りなので、採光は充分。診察室の天井には、子供が上を見やすいようにキャラクターのシールが貼ってある。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

耳鼻咽喉科・アレルギー科

西城隆一郎(さいじょう・りゅういちろう)院長略歴
西城隆一郎院長
1995年 昭和大学医学部卒業
1995年 三重大学医学部耳鼻咽喉科学教室入局
(医局派遣により鈴鹿中央病院、私立四日市病院、済生会松阪総合病院、前田病院、関病院などに勤務)
2005年 三重大学大学院修了
2004年 西城耳鼻咽喉科アレルギー科 開業


■資格・所属学会他
日本耳鼻咽喉科学会・専門医、耳鼻咽喉科臨床学会、アレルギー学会



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