治療中の方は要注意! 高血圧や糖尿病が原因の慢性腎臓病(CKD)って?

[ニュース・トピックス] 2014年2月06日 [木]

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糖尿病や高血圧が原因。初期は自覚症状がありません

(この画像はイメージです)

 慢性腎臓病という病名をご存知でしょうか?これは文字通り、慢性的な経過をたどる腎臓関連の病気の総称です。何となく聞いたことがある人もいるかもしれませんが、02年に初めてアメリカで提唱された新しい考え方で、英語ではChronic kidney diseaseと表記し、日本でも医師の間では略語のCKDで定着しつつあります。
 腎臓では、糸球体と呼ばれる毛細血管が糸玉のように球状に集まっている部分があり、ここで血液を1日150~200リットルも濾過して、その過程で発生した老廃物を尿として体外に排出します。糸球体の濾過量には100 ~120 ml/分/1.73m2という基準値があり、これが(1)60%以下に低下 (2)画像診断、血液・病理検査やタンパク尿、微量アルブミン尿などから腎臓障害を示唆する所見が発見される、の(1)(2)いずれか、あるいはその両方が3カ月以上持続するものをCKDと定義しています。
 CKDの代表的な原因は糖尿病や高血圧。初期は自覚症状はなく、次第に貧血、疲労感、むくみなどの自覚症状があらわれてきますが、この段階では病気がかなり進行しています。極端に進行すると腎臓が機能しなくなる腎不全となり、人工透析や腎臓移植さえも必要になるなど深刻です。また、高血圧や糖尿病はCKDが進行すると加速度的に症状が悪化し、脳卒中や心筋梗塞といった致死的な合併症を発症することもあります。
 また、CKDになるとそれ以外の病気の治療も難しくなります。というのも病気の治療に使われる薬の多くは、体内に吸収されて血液の流れに乗って治療部位に運ばれ効果を発揮後、肝臓で代謝され、腎臓を経由して尿を通じて排泄されます。
 ところがCKDの患者などではこの排泄が適切に機能しないため、薬の血液中での濃度が健康な人よりも上がりやすく、副作用も起こりやすくなります。このため医師はCKD患者での薬の処方をためらいがちになります。

NSAIDsだけではなく、アセトアミノフェンでも注意が必要

(この画像はイメージです)

 CKD治療は糖尿病などの原因を適切にコントロールすることが第一。日本でも次第にその概念が浸透し、09年に腎臓内科医などが加盟している日本腎臓学会が初めて診療ガイドラインを作成し、2013年8月にはこれを4年ぶりに改訂して「エビデンスによるCKD診療ガイドライン2013」を公表しています。
 ただ、新しい概念の病気だけにまだ分からないことも少なくありません。例えばその1つが、CKD患者が発熱時や痛みの発生時に処方される非ステロイド系解熱消炎鎮痛薬(NSAIDs)を服用するとCKDが悪化するのではないかという懸念です。
 この懸念はNSAIDsの作用が関係しています。NSAIDsは炎症による発熱や痛みを増強させるプロスタグランジンという物質の合成を抑制して解熱鎮痛効果を発揮します。ただ、プロスタグランジンは腎臓の微小血管を拡張させることで、前述の糸球体濾過量をあげる働きもあります。つまりNSAIDs投与で体内のプロスタグランジン量が減ると、糸球体濾過量が低下し、結果として腎機能が障害される可能性があるわけです。
 今回のガイドラインでもこの点について触れながらもまだ明らかでないとして、CKD患者でのNSAIDsの処方を最小限にとどめるよう勧めています。
 このような事情からCKD患者への解熱消炎鎮痛薬の処方ではNSAIDsと違うアセトアミノフェンという薬が選択されることが少なくありません。アセトアミノフェンはどのような作用で解熱消炎鎮痛効果を発揮するかは実のところいまだ未解明ですが、少なくともNSAIDsのように腎臓に作用することはないだろうと考えられているからです。でも実は必ずしもそうとは言えないという事実も分かっています。 
 昨年のアメリカ公衆衛生学会では、アメリカ・パーカー大学の研究者が1万人強ものデータからアセトアミノフェンと少量から中等量のアルコールを併用すると腎疾患リスクが123%増加すると報告しました。日常的にお酒を楽しむ人が増えている現代では無視できない問題です。
 また、アセトアミノフェンについては、服用量次第では肝障害が発生しやすくなるという別の危険性もあります。実際、今年1月14日にアメリカ食品医薬品局(FDA)は、325mg超のアセトアミノフェン含有する薬剤の処方・調合の中止を求める勧告を医療関係者に向けて発表しています。この量を超えると、肝障害のリスクを上回る解熱鎮痛のメリットがあることを示すデータが存在しないためです。

知らないうちにアセトアミノフェンを過剰服用している場合も

 アセトアミノフェンは薬局で売られているOTC医薬品のかぜ薬や鎮痛剤にも含まれています。病院でかぜ薬をもらいながら、こうした薬局でのかぜ薬も服用すると、知らぬ間に過剰に服用していたというケースも実際にあります。
 改訂されたCKD診療ガイドラインのNSAIDsに関する項目では、CKD患者でのアセトアミノフェン使用も一定した見解は得られておらず、腎機能に悪影響を及ぼす可能性があるため、NSAIDs同様最小限の使用にとどめるべきとしています。いずれにせよCKD患者での解熱消炎鎮痛薬の服用は慎重にすべきということでしょう。(QLife痛み編集部)

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