慢性腰痛に伴う異常な脳の構造変化は、痛みの治療によって回復・正常化する

[ニュース・トピックス] 2014年2月13日 [木]

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慢性腰痛が脳の構造を変化させてしまう?

(この画像はイメージです)

 様々な作業をする場面において、必ずと言っていいほど負荷のかかる「腰」。腰は文字通り体の要であり、二足歩行で生活する私たち人間の生活において、動作の中心であるとも言える重要な部位です。恒常的に動かす部分なだけに常に負担がかかるため、一度痛めると治りにくく、多くの人が慢性の腰痛に悩まされています。
 腰痛と聞くと、すぐに筋肉や骨・関節・脊髄などの損傷を想像しますが、実は近年の研究では、腰痛が脳とも密接に関係していることが明らかとなってきました。
 慢性的な痛みは、神経細胞が集まっている灰白質という脳の一部を減少させ、末梢らの刺激を受けて興奮をおこす中枢神経の変化を引き起こし、感覚や感情、痛みを抑制する調節性の神経回路を変えてしまう可能性があると言われています。そしてその逆に、慢性腰痛を治療することによって、脳の構造変化が回復し、正常化するとの研究報告もされているのです。

痛みが改善すれば、構造変化した脳も回復する

 2011年にカナダのアラン・エドワード・ペインセンターのDavid A Seminowicz氏らが行った研究の対象となったのは、ひどい腰痛を1年以上持続してかかえていた患者さんたち。治療によって灰白質量の低下が改善可能であるかどうかを、MRIを用いて治療前と治療6ヶ月後で比較。さらに腰痛持ちでない人たちと比較することで、腰痛治療が脳の構造変化とどう関係しているのかを調べました。
 その結果、治療前には左背外側前頭前野、両側の島皮質前部など、複数の脳領域において灰白質量や皮質の厚さが低下していましたが、6ヶ月後にはそれらの多くが回復・正常化され、痛みの軽減と身体機能障害の改善が、脳の構造変化回復と相関関係にあることが判明しました。
 改善が見られた脳領域は鎮痛や痛みのコントロール、そして恐怖感や不安感・うつ感など感情的変化や認識的変化とも関係がある部位のようです。体の痛みが脳の構造まで変えてしまい、認知面や感情面にまで影響を与えることがあるとは怖い話ですが、痛みが回復することで脳の変化も正常化すると判明したのは朗報ですね。腰痛などの痛みをかかえている方で、気持ちの落ち込みやうつ感がある方は、実は慢性的な痛みが原因という場合もあるかもしれません。痛み治療を受けることで、心のケアにも繋がるかもしれませんね。(そねゆうこ)

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