関節リウマチの関節固定術、関節切除形成術、腱(けん)形成術

[手術療法] 2015年8月25日 [火]

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関節固定術、関節切除形成術、腱(けん)形成術

 関節の役割として、動かせる、曲げ伸ばしできる「可動性」とともに、力を加えて物を押さえたり、からだを支える「支持性」も求められます。

 関節破壊が進んでしまい、人工関節置換術の適応がない場合などは、「関節固定術」を行います。この手術を受けると、関節の曲げ伸ばし機能は失われますが、痛みはとり除かれ、かつ支持性をとり戻して最低限の機能が果たせるようになります。手指では、親指の付け根の関節や橈骨手根(とうこつしゅこん)関節、足首の関節などにこの手術が選択されます。また、頸椎(けいつい)に関節リウマチが発症した場合には、歯突起が動いて脊髄を圧迫しないように上部頸椎を固定する手術の適応となります。

 関節固定術を行うと、拇指や手首の脱臼(だっきゅう)が改善されて、物をつまんだり、押さえたりする動作ができるようになります。また、足に対して行った場合は、正座ができないなど、不便なこともありますが、体重をしっかり支えられるようになり、歩行がスムーズになります。

 「関節切除形成術」は、外反拇趾(がいはんぼし)やハンマー趾など、足に強い変形と痛みがある場合に行います。変形した箇所の骨を切って新たに骨同士で関節の働きをさせたり、部分的に固定することで痛みがとり除かれ、再び歩行できるようになります。

 関節が損傷されると、その周辺の組織も損傷することがあります。関節を動かす筋肉のうち、関節の近くで骨にくっついて骨を動かすひものような細くて固い組織を腱と言いますが、ここが炎症をおこしたり摩耗して切れてしまうことがあります。それをつなげる手術が「腱形成術」です。

関節の脱臼を防ぎ、支持性を高める手術
関節の脱臼を防ぎ、支持性を高める手術

滑膜切除術 – 新しい薬の登場で実施数は減少傾向

 関節が破壊される前の予防的な手術として「滑膜切除術」があります。関節リウマチでは、免疫機能が関節内の滑膜を異物として攻撃し、このため滑膜に炎症がおこり、腫れて痛みが生じます。この関節内の腫れが限定的なうちに、広範囲に滑膜を切りとってしまうことで、痛みをとり除き、関節破壊の進行を食い止めるのが“滑膜切除術”です。

 この手術を行うには、いくつかの条件があります。他の手術と同じように病気の活動性がある程度抑えられていることはもちろん、滑膜に発生した肉芽種(パンヌス)が軟骨の下に入り込んでいない状態であることです。パンヌスが骨に食い込んだあとで滑膜を切除した場合、一時的に痛みをとり除くことはできても、炎症が再発し、関節破壊も進んでしまいます。手術前には、レントゲン、MRI、あるいは超音波検査などの画像を見て病変がどこまで及んでいるかを確認します。

 最近では、膝関節など比較的大きな関節では、“関節鏡”という内視鏡を関節内に入れて手術を行うようになりました。これは、傷口も小さいので患者さんの負担も少なく、部位によっては、翌日から関節の曲げ伸ばしができる人もいるほど即効性のある手術方法です。しかし、病変が深くまで及んでいる場合は、十分に切除できない可能性があるため、関節を大きく切開する手術が行われます。

 生物学的製剤の普及により、早期から強い薬によって滑膜の炎症が抑えられるようになり、滑膜切除術の実施数は減少傾向にあります。しかし、合併症などで初期に薬が使えなかったり、薬が効きだす前に症状が進んでしまった患者さんには滑膜切除術は依然として有効です。

滑膜を切除することで、腫れや痛みが改善する
滑膜を切除することで、腫れや痛みが改善する

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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