出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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ネフローゼ症候群
ねふろーぜしょうこうぐん

ネフローゼ症候群とは?

どんな病気か

 尿中に大量の蛋白が出る病気で、低蛋白血症や浮腫(むくみ)がみられます。

原因は何か

 大人では膠原病など全身の病気に伴って起こる二次性ネフローゼ症候群が多いのですが、子どもでは腎臓に直接の原因があって発症する特発性(一次性)ネフローゼ症候群が90%を占めます。その大半は腎臓の組織にほとんど変化がない微小変化型です。

症状の現れ方

 微小変化型ネフローゼ症候群の好発年齢は2~6歳です。頻回に再発する例が多いのですが、将来、慢性腎不全に至ることはありません。

検査と診断

 主症状は高度蛋白尿と低蛋白血症で、しばしば浮腫(むくみ)や高コレステロール血症を伴います。表5表5 小児ネフローゼ症候群診断基準に示した診断基準に基づいて診断します。

表5 小児ネフローゼ症候群診断基準

治療の方法

 食塩と水分摂取を制限し、副腎皮質ステロイド薬を用います。微小変化型ネフローゼ症候群の90%はステロイド治療によく反応し、7~10日で尿蛋白は改善します。ただし、副腎皮質ステロイド薬を比較的大量に使うので、高血圧、消化管潰瘍、低カリウム血症緑内障白内障骨粗鬆症などのさまざまな副作用に注意する必要があります。

 副腎皮質ステロイド薬が効かない場合は、巣状分節性糸球体硬化症などの慢性糸球体腎炎を疑い、腎生検(組織をとって調べる)を行います。

 微小変化型の約30%は頻回に再発しますが、腎不全への進行は極めてまれです。一方、10~20%は副腎皮質ステロイド薬が効かないステロイド抵抗性ネフローゼ症候群です。腎生検による組織診断が必要で、多くは巣状糸球体硬化症です。治りにくい腎炎で、小児末期腎不全の原因の約20%を占めます。しかし、小児では成人より治療に対する反応性がよく、軽快例もみられます。

病気に気づいたらどうする

 とくに初発では入院治療が必要です。ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群は、小児腎臓病専門医による検査・治療が必要です。

(執筆者:新潟大学医歯学総合病院院長 内山 聖)

ネフローゼ症候群に関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、ネフローゼ症候群に関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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新潟大学医歯学総合病院院長 内山聖

 IgA腎症は学校検尿で発見される腎炎やネフローゼ症候群のなかで最も多くみられ、小児における慢性糸球体腎炎の半数を占めます。臨床症状はほとんどなく、学校検尿で偶然に発見されることが多いのですが、ネフローゼ症候群や慢性腎不全として見つかることもあります。

 小児では小学校高学年に発症のピークがあり、6歳以下ではまれです。扁桃腺炎などの感染を契機に肉眼的血尿(コーラ色の尿)がみられることがありますが、このような肉眼的血尿の80%はIgA腎症が原因です。

 腎生検による病理組織で確定診断します。以前は小児期のうちに、10~15%が腎不全に移行しましたが、近年は副腎皮質ステロイド薬やACE阻害薬などを用いる治療の進歩により、小児期に腎不全に至る例はかなり減少しました。しかし、依然として小児期IgA腎症の50~80%は成人してからも症状が持続します(キャリーオーバー)。

ネフローゼ症候群に関する医師Q&A