[ウンチから、腸内環境がわかる!] 2010/06/18[金]

いいね!つぶやく はてなブックマーク

 最近、「生きたまま腸に届く・・・」「腸内環境」「プロバイオティクス」という言葉を、よく耳にしませんか。腸内細菌研究の第一人者、辨野義己(べんの・よしみ)先生に、私達の腸のなかはどうなっているのかをお聞きしました。驚くべき腸の素顔から、ウンチの奥深さ(!)まで、分かりやすく解説していただきます。便秘気味の人は特に必見です。「腸年齢チェックテスト」もぜひやってみてください。

腸内バランスとは大腸のこと

「腸内バランス」が大事と最近言われますが、あれは何ですか。
「腸内バランス」とは通常、「大腸内に生育している細菌の構成バランス」のことです。
小腸や十二指腸は関係ないのですか。
大腸と小腸の比較図:大腸…長さ1.5m/表面積テニスコート0.5面分 小腸…長さ6~7m/表面積テニスコート1面分 大腸は、小腸より長さが短いし、面積も小さいのですが、小腸よりも病気が起きることがずっと多いのです。「大腸がん」「大腸ポリープ」「大腸炎」「大腸カタル」「潰瘍性大腸炎」など、大腸関連の病名は多くありますよね。
 これは、小腸が病気に対して免疫を活性化させる機能を持っていることもありますが、大腸が、うんちと腸内細菌の溜まり場であることも強く関係しています。どういうことかというと、大腸が正常に働いていないと、腸内細菌によって「腐敗」が発生するのです。腐敗物質は、腸内で有害物質に変わったり、さらには腸壁を介して体内に吸収されて、さまざまな病気の成因になる可能性があります。だから大腸内の状況は、私達の健康と深い関わりがあるのです。
腸内細菌には、確か「善玉菌」と「悪玉菌」があるんですよね。
健康な成人の腸内環境バランス図:善玉菌20% 悪玉菌10% 日和見菌70% 健康な人であれば、善玉菌20%、悪玉菌10%のバランスになっています。残りの70%は「日和見菌」といって、良い働きも悪い働きもする菌種です。善玉菌が優勢だと良い働きをしますが、悪玉菌が優勢になると悪さをします。とはいっても、優柔不断なのは日和見菌だけではなく、善玉菌のなかには他の菌と作用し合うと悪さをするヤツがいるし、逆に悪玉菌でも状況次第で良いことをするヤツがいるのです。
人間社会みたいですね。
 そう、まるで一つの惑星の生態系です。健康雑誌では、「善玉」「悪玉」とレッテルを貼って、それらの数だけが問題のように言われますが、実態はそれほど単純ではありません。特に日和見菌の働きはまだまだ未解明です。
大腸にすんでいる細菌の数って、どれくらいですか。
 ざっと「腸内細菌の重さは1.0~1.5Kg、その種類は1000種類以上、その数は600~1000兆個」ですね。
私の体重の1Kg以上は細菌で出来ている!…「菌も積もれば」というわけか。
 オナカのなかで、約1000兆個もの細菌が—善玉菌と悪玉菌と日和見菌が—24時間勢力争いを繰り広げている様子を、想像してみてください。

善玉菌vs悪玉菌?代表選手を覚えておきましょう

腸内に1000兆もの細菌がいるなんて。。。
 「善玉菌」の代表選手としては、ビフィズス菌、乳酸菌が有名ですね。腸内にいる数では、ビフィズス菌が乳酸菌の約1千倍多く、ビフィズス菌は酸素があると生きられませんが、乳酸菌は生きられる、という違いがあります。

善玉菌:ラムノーザス菌(ラクトバチルス属)ロンガム菌(ビフィドバクテリウム属)
「ビフィズス菌」「乳酸菌」といっても、それぞれ1種類づつ、ではないんですよね。
 たとえば乳酸菌には279菌種あるのが分かっています。市販ヨーグルトのパッケージに、もし「カゼイ・シロタ株」と書いてあったら、それは乳酸菌のなかの「ラクトバチルス属」のなかの「カゼイ菌」という菌種の、そのまた一つ「シロタ株」、というわけです。
では、悪玉菌には、どんなのがありますか。
 クロストリジウム属のウェルシュ菌が代表選手ですね。腸内にある食べカスを腐敗させて、硫化水素やアンモニアなどの腐敗物質を生み、ガスや悪臭のもととなる物質を作りだします。一部は食中毒の原因にもなります。黄色ブドウ球菌も有名ですね。皮膚などにも生育していて、感染症の原因になります。

悪玉菌:ウェルシュ菌(クロストリジウム属)黄色ブドウ球菌(ブドウ球菌属)
最近「プロバイオティクス」と聞きますが、あれは何ですか。
 プロバイオティクスとは、人体に有益な生きた微生物、という意味ですが、最近は「善玉菌を増やす食品」の総称として使われることが多くなりました。先ほどのシロタ株もプロバイオティクスに利用されますね。私達が口から摂取しても胃酸で死滅することなく腸まで生きて届くからです。細菌は皆、個性を持っているのです。
潰瘍性大腸炎に関する
この記事を読んだ人は
他にこんな記事も読んでいます。
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。