“私だけかも…”と悩まないで!~「更年期障害」に関する大規模患者アンケート
[身近な病気を知ろう ~QLife調査~] 2013/02/28[木]
40代も半ばを過ぎると気になってくるのが更年期障害。「どんな症状が出るのか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、40~50代の女性3888人に更年期に関するアンケートを実施。その結果をご紹介するとともに、更年期障害の治療のいまを、今回の調査を監修した飯田橋レディースクリニック院長 岡野浩哉先生に話を伺いました。
多くの人が悩む更年期障害。閉経する5年ほど前から症状が
「更年期障害は、卵巣機能が低下することによって女性ホルモンが減少することで発症します。だいたい閉経する数年前から症状が現われます。その年齢は個人差がありますが、だいたい40代後半頃。まず生理が乱れてくることからはじまり、のばせ・ほてりや汗、睡眠障害に関節痛などの身体症状のほか、イライラ、気分の落ち込み、意欲の減退など精神的な症状までみられるのが特徴です」(岡野先生)
今回のアンケートでも、疲れやすくなったり、急に顔がほてる(ホットフラッシュ)、頭痛やめまいなど、ひとつの症状というよりはいくつかの不定愁訴に悩んでいる現実が見えてきました。
「気力がなくなり集中力が落ちるため記憶力が低下したと感じ、実際今までやってきたことができなくなるので、仕事を辞めざるを得なかったりする場合もあります。しかしすべての人にすべての症状が当てはまるわけではなく、症状も病院にかかるほどではないという軽い人から重い人まで、個人差があります」(岡野先生)

58.6%が日常生活に何らかの影響がある
更年期障害における症状について、日常生活へ影響が出ている人は「やや影響がある」「大いに影響がある」を合わせると全体の約6割という結果でした。普段の生活において影響があるにも関わらず、病院を受診した人はわずか2割強という結果に。
「家事にしろ仕事にしろ、これまで普通にできていたことができなくなると、家族や職場からは『怠けている』と捉えられがちです。その結果、更年期障害が原因であるにも関わらず自らの責任と考え、更に無理をするという悪循環に陥る人も少なくありません。実際に受診した人たちは、家族よりも同世代の友人知人と話をすることで訪れることが多く、同じ経験をした先輩から正しい知識と情報を得て来院される場合もよく見られます。同じ年代の友人と更年期の症状について話をする機会を持つことは、こうした受診を促すきっかけにもなるのです」(岡野先生)

市販薬と違い、病院受診ならではの、メリットも大きい
病院受診では検査も多く、費用がかかると心配される方もいるでしょう。しかし、さまざまな検査は正しい診断と現在の健康チェックにつながり、費用に見合った評価ができます。しかも薬剤の処方は保険診療でまかなえます。更年期障害の中心的な治療法について岡野先生にうかがいました。
「更年期障害の根本的な治療法は、減少した女性ホルモンを補うHRT(ホルモン補充療法)です。他に漢方薬などの処方もあります。現在は市販でも様々な薬やサプリメントなどが出回っていますが、それらに比べても、HRTの薬代だけなら決して高くはありません。高価なサプリメントなどを購入するよりも比較的安価な値段で治療を受けることができます」(岡野先生)
病院を受診することで、症状が改善した方はおよそ7割。多くの方が受診したことで日常生活を従来通り快適に送れるようになったと回答しています。一方でサプリメントや更年期障害市販薬では7割の方が改善が無かったと回答しています。

多くの女性が症状の改善を実感しているHRTとは?
女性ホルモンの不足が原因の更年期障害の治療法として、最も有効なものがHRTです。閉経に向かい急激に減少する女性ホルモン(エストロゲン)を、飲み薬や貼り薬、塗り薬で補充する治療法です。
「女性ホルモンを補充することによって、自律神経のバランスが整ってくるので、ホットフラッシュや発汗異常、睡眠障害、動悸などの症状の改善が期待できます。また骨密度の低下、コレステロール値の上昇、皮膚の乾燥なども抑えます」(岡野先生)
今回の調査でも、HRTをおこなった患者さんのうち、80%近くが「とてもよくなった」「ややよくなった」と回答。HRTが症状の改善に効果的であることが分かりました。特に「とてもよくなった」と感じる患者様の割合は、漢方などの他の治療法と比べ群を抜いて多いこともわかりました。

「HRTを始めると、不正出血や胸や下腹部の張り、むくみなどが一過性に見られることがありますが、こうした症状は体が慣れていくうちに消えていきます。HRTは更年期障害に健康保健がきく国に認められている治療法です。しかし、安全に行うために定期的な受診と検査が必要です。その際には婦人科診察やがんの検査、ホルモンやコレステロールなどの血液検査なども行います。典型的な更年期症状では早い人だと2週間ほどで症状が改善してきます。『今まで悩んでいたのが嘘のように体がとても楽になった』『もっとはやく受診すればよかった』という声もよく聞かれます」(岡野先生)
更年期障害の治療は我慢しないで婦人科へ
『こんなことで病院へ行ってもいいのかしら』と考えて病院へ行くのをためらってしまう人も多いのではないでしょうか。
「特に産婦人科は『お産か子宮・卵巣の病気で行くもの』と決めつけている人もいるかもしれません。婦人科は女性ホルモンに関係するすべての症状をみる女性のための専門科です。女性ホルモンは更年期以降に問題となる生活習慣病や動脈硬化症、骨粗鬆症にも強く関係しています。こんなことくらいと思っていても、医師に相談した結果、病気が見つかることもあるのです。更年期障害の症状が出る前、40代のうちから婦人科を受診し、自分の体調の変化と月経やホルモンの状態との関係を定期的にチェックしている人もいます。そうしていれば、どんな更年期の不調がいつ訪れようとも直ぐに対応ができるという安心感があるそうです。現代の婦人科は女性ホルモンを熟知し、女性の一生をサポートすることをスローガンとして掲げています。後半の人生をよりよく生きていくためにも、自分の体調と向き合っていくことは大事なこと。そのためにも婦人科のかかりつけ医などを作っていつでも相談できる環境を用意しておくことは大切です」(岡野先生)
⇒更年期障害とその症状に関する調査結果報告書
⇒更年期障害についてもっと詳しく。「エンジョイエイジング」
岡野 浩哉(おかの ひろや)先生

【経歴】
平成元年6月 群馬大学医学部附属病院 産婦人科
平成11年6月 群馬県立がんセンター婦人科 副部長
平成16年1月 米国メイヨ・クリニック留学 研究員
平成18年4月 東京女子医科大学 産婦人科 講師
平成20年4月より 飯田橋レディースクリニック 院長
【所属】
日本女性医学学会 幹事・評議員、日本産婦人科医会 女性保健委員会 委員、更年期と加齢のヘルスケア学会 幹事、日本骨粗鬆症学会 評議員、HRTガイドライン 作成委員ほか
更年期障害が相談できる病院検索
更年期障害を相談できる病院が探せます。
- この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。
