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[医療×エンタメ] 2019/07/19[金]

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戸崎光宏先生
ラジエーションハウスの医療監修者・戸崎光宏先生

ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」の放映終了から早1か月。そろそろ“ラジハロス”になっている人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために今回、原作マンガおよびドラマの医療監修者である、放射線科医の戸崎光宏先生が、診療放射線技師と放射線科医のリアルな現場における、さまざまなエピソードを語ってくださいました。渡米した五十嵐さんが、今度こそ甘春先生との約束を果たすために帰国するその日まで、ドラマを振り返りつつ、放射線科について、より理解を深めておきましょう!

――放射線科は、がんの放射線治療をする診療科だと思っていたのですが、今回のドラマで画像診断を行っていると知りました。放射線科医は、画像診断と放射線治療の両方を行っているのでしょうか?

まず、医学部を卒業して何科の医師になろうか考えたときに、「内科」「外科」などと同じく、「放射線科」という入り口があります。その中で、最初に、放射線機器、核医学、画像診断等、放射線科の全ての内容を習得する「一次試験」があり、その数年後に、「診断専門医」と「治療専門医」のどちらか1つを選ぶことになります。ですから、診断と治療の両方を行う医師は、今はいません。ただし、選択制となったのは10年前くらいのことで、それ以前は、治療の先生がときどき診断を行ったりすることもありました。ですが、治療は大きな放射線治療機器を使うなど、専門性がより高いため、診断の先生が治療を行うケースはなかったですね。

――先生から見て、今回のドラマではどの俳優さんのキャラクターが、実際の現場の診療放射線技師に一番近いと思われましたか?

皆さん実際に居そうな感じの方ばかりでしたよ。というのも、実は、原作マンガで最初のキャラクター設定をする際に、「技師長さんはあんな感じで…」という具合に、私が知る実際の技師さんの具体的なイメージを伝えながら決めていったんです。だから、どのキャラクターも実際の技師さんにぴったりなんですよ(笑)。そういうわけで、今回のドラマは、現場で働く技師さんから見ても、「ああいう技師長、いるいる!」「ああいう女性技師、いるいる!」と、結構リアルでおもしろかったんじゃないかな?

――主役の五十嵐さんは、幅広い診療科の、さまざまな検査データに精通していましたが、放射線科医は、内科から整形外科まで、所属する病院にある全ての診療科の読影をするのですか?

基本的には、検査結果として上がってくる画像全部に目を通すので、そうだと言えます。そのため、さまざまな診療科の知識を学ぶ必要があるわけですが、多分放射線科医は、そこに魅力を感じてなったという人が多いんじゃないかなと、個人的には思っています。ただ、最近では、CTやMRI検査から、膨大な数の画像が上がってきて、それらを次々と読影しなくてはなりません。日本の放射線科医は人数が少ないこともあり、おそらく読影業務量が世界一多くなっています。そのため、実際にはCTやMRI画像の読影をしていることがほとんどで、胸部X線写真の読影などは、各診療科などが行っているようなケースが多いように思います。

戸崎光宏先生

――放射線科医と診療放射線技師は、実際にドラマと同じように密に連携しているのですか?

ほとんどの病院で、そうだと思います。ドラマで鏑木先生がちょこちょこ検査室に出入りしていましたよね。先ほどお話しした通り、近頃の放射線科医はCTやMRI画像の読影で忙しい場合が多く、しょっちゅう検査室に出入りするというわけにはいかないかもしれませんが、比較的時間があるときには、あんな感じをイメージしてもらえればと思います。

業務上の連携が密なので、医師と技師は自然と仲良くなる場合が多いように思います。私も仕事終わりに技師さんたちと食事などによく行きました。また、技師さんと一緒に徹夜で実験をして、技師さんを筆頭著者とした論文を書いた経験もあります。

――ドラマであったように、「診療放射線技師のスルドイ意見で難しい症例に気付く」というようなことは、実際にもありますか?

放射線科医になったばかりで経験の浅い医師の場合だと、ベテランの技師さんの方が気付くようなケースもあるかなと思います。

――診療放射線技師に興味を持ち、インターネットで検索したら、労働時間が長くて大変というような投稿が多数見受けられました。放射線技師は人数が足りていないのでしょうか?

データはありませんが、技師さんからは、不足しているという話は聞かないですね。病院の少ない地方などでは、もしかしたらそういうこともあるのかも知れません。大きな病院だと、当直があったり、夜まで検査したりするケースもありますが、そういう場合には交代制で勤務しています。

一方、日本は放射線科医の数が少なく、特に治療できる医師が少ないということが問題になっています。対人口あたり少ない科は「病理科」「麻酔科」「放射線科」と言われていますが、放射線治療医となると、さらにその半分です。海外では放射線科は人気があって、決して少なくはないのですが…。

――ドラマで女性の黒羽技師が、「昔は女性が少なくて苦労したわ」と言っていましたが、いま診療放射線技師の男女の割合はどのくらいなのでしょうか?

確かに、昔は技師さんと言えば年配の男性がほとんどで、女性が少ない仕事でした。しかし今は増えてきており、はっきりとした割合はわかりませんが、半数近くは女性であるように思います。そのおかげで、マンモグラフィなど、女性の検査は女性の技師さんが行う病院がほとんどとなりました。ドラマでは五十嵐さんがマンモグラフィ検査もしていましたが、実際には男性の技師さんがマンモグラフィ検査をするケースはほとんどなくなってきています。

――今回、デンスブレストの回が一番印象に残りました。検診などで、こちらから聞けば、自分がデンスブレストかどうか教えてもらえるのでしょうか?

病院によると思います。デンスブレスト(乳腺の脂肪濃度が高い)は特殊な情報ではありません。放射線科医は、読影の結果、乳腺の濃度はどうなのか、病変があるのか、判定はどうなのか、という内容をレポートに記載するのが、世界の基本となっています。ですので、デンスブレストであれば、その旨はレポートに必ず記載されます。しかし、患者さんから問い合わせがあったときにどのように答えるかについては、病院ごとに決められた規則によるので、一概には言えません。

ちなみに、デンスブレストでは病変が見えづらくなりますが、見えるケースももちろんありますので、デンスブレストであった場合、マンモグラフィ検査は受けても無駄なのかというと、そんなことは決してありません。

戸崎光宏先生

――親戚にがんが多いので少し心配ですが、自分ががん家系なのか検査してもらいたい場合、何科を訪れたらよいのでしょうか?

遺伝専門の診療科があれば、そこで検査してもらえるかも知れません。しかし実際には、がんになっていない人が、心配だから検査を受けたいと申し出るケースはほとんどありません。多くの場合、来院してがんと診断され、医師が家族歴などを調べていくうちに遺伝性のがんである疑いが出てきたら、遺伝専門の診療科に連携するという流れになると思います。このような連携ができるのは基本的に大きな病院です。ですから、患者さんから医師に遺伝性のがんの可能性を訴えるというよりは、主治医から遺伝専門の医師に検査の依頼が行く場合がほとんどと言えます。

一方で、「近所にがんの人が多いから」「夫の兄弟ががんだから」などの理由で、自分も遺伝的にがんになりやすいのではないかと心配している患者さんも、ときどきいます。しかし、そういう理由でがんになりやすくなることはありません。遺伝の知識は難しいですが、正しい理解が社会的に浸透すると、患者さん自ら遺伝専門の診療科に検査を申し出ることが増えてくるかも知れませんね。

――ドラマ最終回の、うつ病だと思っていたのが脳脊髄液減少症だったのが、とても気になりました。最近、世の中的にメンタルの病気が多くなっているようですが、脳脊髄液減少症の可能性について、一般人が簡単に見分けられるようなポイントはありますか?

今のところ簡単に見分けるのは難しいですね。ただ、脳脊髄液減少症でうつのような症状が現れるというのは、比較的新しい概念です。今は、特に外傷がある場合に病院で検査を受ければ、うつ病なのか、脳脊髄液減少症なのか、診断できるようになりました。事故などに遭って、その後うつのような症状が現れた場合には、病院で事故のことも伝えるようにしてください。

――何かの病気かもしれないと思って、いざ病院を探す際に、大きな病院だから安心、または専門医がいるから安心、と考えてよいものかどうか迷います。そんなとき、「放射線科のホームページのこの情報を見ておくと、判断の手がかりになるよ」というようなことがあれば、ぜひ教えていただけますか?

放射線科のページ内の情報で判断をするというのは難しいかも知れませんが、放射線科に加え、総合診療科もあるような病院を訪れると、心強いのではないかと個人的には思っています。総合診療科では、まず状況からあらゆる病気を鑑別に挙げます。そこから慎重に病気を絞り込んでいくのですが、ここで放射線科医の専門的な画像診断により、正確に病気を絞っていくことが可能です。例えば、総合診療科医から、「病気をこれ以上絞り切れない」という相談を受けたら、放射線科医は、「この種類の検査画像を取れば〇〇病と△△病の可能性が消えますね?」という風に、提案することができます。難しい病気ほど、総合診療科と放射線科のタッグで診断がつく可能性が上がるのではないかと考えています。

――五十嵐さんは最終回で、渡米して人工知能(AI)を学ぶようなこともにおわせていましたが、昨今、医療におけるAIの利活用のニュースをよく耳にするようになりました。AIの医療への参入で、先生は放射線科医の「働き方」がどのように変わっていくと予想されますか?

ガラリと変わるでしょうし、どんどん変わって欲しいです。放射線科医の働き方がどう変わっていくかは、「AIの能力の進歩に合った変わり方をしていく」と思っています。できる部分はどんどんAIがやってくれるようになり、最終的にはSFのように、全部やってくれるようになれば良いと私は思っています(笑)。ただ、がんの告知をロボットが無機的に行うようなのは嫌ですよね。ですから、「患者さんに向き合う」部分を中心に、人間が行うべき仕事が自ずと見えてくるようになり、AIと医師の仕事が住み分けされた形で共存していくと予想します。

――最後に、先生からドラマ「ラジエーションハウス」ファンの方々に、一言お願い致します!

これは原作マンガからなのですが、「ラジエーションハウス」はもともと、画像診断フロアという医療現場があり、そこにさまざまなドラマがあるのだということを伝えたいというコンセプトのもとで始まったものです。今回のドラマでは、さまざまな病気とその診断が出てきましたが、どれもかなりリアルに真実を伝えています。視聴者の皆さんには、「患者さんの目の前にいる医師が診断結果を伝える裏に、放射線科医と診療放射線技師もいるんだよ」ということを、今回のドラマを通じてわかっていただけたら良いなと思っています。

戸崎先生は、とても気さくな先生で、今回、放射線科医と診療放射線技師の実際の様子から、病気と検査の実際、そして未来の医療まで、「リアルラジエーションハウス」の貴重なお話をたくさん語ってくださいました。病気やけがで病院に行ったら、問診の際にできるだけ多くの情報を医師に伝えることが、正確な診断につながるということもわかりました。AIがより良い医療をもたらしてくれる近未来にも期待できそうですね。(QLife編集部)

【戸崎光宏先生プロフィール】

相良病院附属ブレストセンター放射線科部長、さがらウィメンズヘルスケアグループ乳腺科部長。東京慈恵会医科大学放射線科非常勤講師、および、昭和大学医学部放射線医学講座放射線科学部門客員教授を兼務。日本医学放射線学会専門医、検診マンモグラフィ読影認定医。日本乳癌学会評議員、日本画像医学会評議員、NPO法人乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)理事長など、役員、ガイドライン委員多数。1993年に東京慈恵会医科大学を卒業後、東京都立駒込病院、東京慈恵会医科大学、ドイツのイエナ大学、亀田総合病院(乳腺科部長)、亀田京橋クリニック(診療部部長)を経て、2015年より現職。

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