[これからの花粉症治療] 2013/05/10[金]

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アレルギー性鼻炎の最もつらい症状「鼻閉」

 例年に比べて飛散量が多かった地域もあった2013年春の花粉シーズン。花粉症を自覚している方にとっては辛い時期だったのではないでしょうか。スギ花粉のピークは過ぎましたが、いわゆる“花粉症”として知られる「季節性アレルギー性鼻炎」に加えて、ダニやカビ、ハウスダストなどを抗原とする「通年性アレルギー性鼻炎」の患者数も増加の一途にあります。
 これまで、アレルギー性鼻炎の治療には、第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧ステロイドといったお薬によるものに加え、手術療法などが用いられてきました。しかし、それぞれいわゆる“得意分野”と“不得意分野”があり、人によっては、鼻水やくしゃみが抑えられても、鼻づまりには効果が不十分な場合があったり、またはその逆だったりというケースが多く、患者さんの中には複数のお薬を処方されていた方もいらっしゃったかと思います。
 そんな多くの方が悩まされていた2013年の春、アレルギー性鼻炎対策に新たな選択肢となるお薬が加わっていたということをご存じだったでしょうか。年々増加するアレルギー性鼻炎患者に対する治療の現在について、多くのアレルギー性鼻炎患者の治療を行ってきた東邦大学医療センター大橋病院 耳鼻咽喉科准教授の大木幹文先生にお話をうかがいました。

眠れない、口が渇く…などさまざまな影響を及ぼす鼻閉

東邦大学医療センター大橋病院 耳鼻咽喉科 准教授 大木幹文先生

 さまざまな症状が複合的に起こるアレルギー性鼻炎の症状の中で、最もQOLの低下が見られるものに鼻閉があります。鼻閉とは、いわゆる鼻づまりのこと。鼻粘膜の炎症などによって起こります。鼻づまりが起こると、息苦しくて眠れなくなったり、慢性的な酸素不足によって頭痛が起きたり、集中力が低下する、またいびきに悩まされるなど、著しくQOLを低下させてしまいます。さらに、通年性アレルギー性鼻炎の場合、患者さん自身が鼻炎であることを自覚していないまま、QOLの低下に悩んでいる場合も多く、日常生活に影響がおよびながらも、病院を受診せず、放置してしまうケースもよくあります。
 大木先生は「眼や鼻水・くしゃみなどの症状とはことなり、鼻閉は患者さんの辛さがあまり周囲に伝わりません。もし辛いと感じたならば、病院を受診してほしい」と語ります。
 さらに大木先生は、「アレルギー性鼻炎の治療には、患者さん一人ひとりのライフスタイルにあった治療プランを立てることが重要です。例えば、昼間の家事がはかどらない主婦の方の治療法と、一瞬たりとも気を抜けない電車やバスの運転手の方の治療法は異なります。また、同じ患者さんでも時期によって、鼻閉がひどくなったり、そしてくしゃみがひどくなったりと症状が異なります。例えば、通年性アレルギー性鼻炎では、空気が乾燥する冬場に症状が強くなる傾向があります。刻一刻と状況が変化するそれらを解決していくためには、こまめな病院受診で、医師に対して“今、どんな症状が出て、どんなことに困っているのか”を共有し、ともに対策を練る必要があります」と病院を受診することの意義を語ります。

これまでのアレルギー性鼻炎治療でも実績がある2つの薬を配合した新規抗アレルギー薬

 大木先生が、「通年性アレルギー性鼻炎の患者さんのうち、現在の治療法ではなかなか鼻づまりがすっきりしないという方はもちろん、花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎の初期段階での治療法として高い期待をもっている」と語るのが、2013年春に新しく登場した新規抗アレルギー薬です。
 その新規抗アレルギー薬は、これまでアレルギー性鼻炎、特にくしゃみや鼻水を抑えるお薬として処方されてきた第2世代抗ヒスタミン薬と、鼻閉に対して作用する血管収縮作用のあるお薬が1つになった配合剤で、双方の症状に対して改善が見込めるお薬として期待されています。「まだ導入されたばかりなのですが、配合されている2つのお薬は、これまでのアレルギー性鼻炎の治療でも実績があるものです。鼻閉に悩む通年性アレルギー性鼻炎の患者さんはもちろん、この5月以降に始まるイネ花粉や秋のブタクサのシーズンの初期段階での治療に最も大きな期待を寄せています。まずはこのお薬を飲んでその後、症状に合わせて別の選択肢、例えば外科的な治療を検討していくのがいいのではないかと思います。」
 花粉症でもないのに、年中鼻づまりでお悩みの方は、通年性アレルギー性鼻炎の可能性があります。「わざわざ鼻づまりで病院なんて……」と思わずに、まずは病院を受診してみてはいかがでしょうか?

大木幹文(おおき・もとふみ)先生

東邦大学医療センター 大橋病院 耳鼻咽喉科 准教授
同志社大学研究開発推進機構治療システム研究センター嘱託研究員
1979年 東京医科歯科大学 医学部 医学科卒業
【主な役職】
日本鼻科学会代議員、日本鼻科学会鼻腔通気度標準化委員会委員、
国際鼻腔通気度標準化委員会委員(日本代表)、日本医用エアロゾール研究会幹事、
関東耳鼻咽喉科アレルギー懇話会世話人
【所属学会】
日本耳鼻咽喉科学会、日本気管食道科学会、日本耳科学会、日本口腔咽頭科学会、
日本アレルギー学会、日本鼻科学会、日本睡眠学会、日本医用エアロゾール研究会、
Canadian Society of Otolaryngology Head & Neck Surgery

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  2. 花粉症治療薬、患者さんが求めるのは「眠くならない」+「効果が強い」

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