より侵襲の少ない手術方法と術後の日常生活について
[脊柱側湾症について] 2008/09/11[木]
目次
(1) 脊柱側湾症とは何か?
(2) 特発性側湾症について
(3) 健康への影響と治療について
(4) 装具の効果と手術療法の適応は?
≫(5) より侵襲の少ない手術方法と術後の日常生活について
より侵襲の少ない手術方法
脊柱側湾症の矯正術は、背中側を切開して椎骨の後方に金属を固定して矯正する後方アプローチと、脇を切開して椎骨の前方(椎体そのもの)に金属を固定して矯正する前方アプローチがあります。
いずれも金属製のスクリュー(ネジ)やフック、ワイヤー、ロッド(金属の棒)などを組み合わせて使用します。70度くらいまでの側湾は、術者が得意とする方法であれば、効果についてはほとんど差がありません。80度を超えると高度な技術が必要となります。
私は腰椎や胸椎から腰椎の移行部については、前方アプローチで行います。前方では、椎体そのものを直接矯正できるので、狭い固定範囲で高い矯正効果が得られると考えています。後方よりも固定する範囲が少ないので、出血量が少なく、時間もより短くなるので、体への侵襲が少なくなります。また、最近では小さな皮膚切開、例えば12cmで5椎体の手術を行うこともできます。
もう一つ重要なことは、手術の傷あとです。この場合は、傷が体の脇にくるため、手を伸ばしていると隠れる位置になります。
しかし、前方の場合は、横隔膜や腹膜の処理、近くに大血管が通っているなど、手術部位に到達するまでの展開が複雑です。それに比べて後方アプローチは展開が容易なため、前方アプローチで行う医師は多くありません。
腰椎とは違って、胸椎で広範囲の湾曲の場合は、前方アプローチが低侵襲とは言えません。それに、乳房の脇に傷がつくより、背中の方がよいのではないかと考えます。なるべく目立たないところで手術をすることが、美容の目的からは重要なことです。
近年、脊椎外科においても内視鏡による侵襲の少ない手術が普及しつつありますが、側湾症の矯正術については、手術時間がかかる上に手術操作が十分に行えないなど、まだまだ課題が多く残っています。米国でも一時期盛り上がりを見せましたが、現在は減少傾向にあります。
大切なお子さんを預かって手術をするわけですから、最大限リスクを避けることが最重要と考え、より確実な方法で手術を行っています。
手術後の日常生活について
手術後は骨癒合《こつゆごう》(骨がくっついて一塊になること)を第一に考えます。
日常生活については、半年間スポーツは禁止です。その後は軽いスポーツから始め、通常のスポーツは術後10ヶ月としています。
背骨を金属で固定しているので、背中の柔軟性は失われてしまいます。ですので、女性ではあまりしないと思いますが直接体のぶつかるようなスポーツ(柔道、格闘技、ラグビーなど)は禁止です。テニスやスキーなどは問題ありません。飛んだり走ったりと、日常生活は普通に過ごすことができます。
もちろん結婚や出産をされる方もいますし、まったく問題なく生活している方がほとんどです。
背中に金属が入っていることで心配される場合があります。金属があたって痛いということもありませんし、これまでに250人以上の患者さんを手術していますが、不都合で金属を抜去しなければならないことはありませんでしたので、あまり気にせずに生活されると良いと思います。
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