T細胞が関節リウマチを起こすときに認識する自己抗原を特定
[ニュース・トピックス] 2014年11月19日 [水]
京都大学らが関節リウマチモデルマウスを用いて
京都大学は10月17日、同大再生医科学研究所の伊藤能永助教らと京大病院リウマチセンターからなる研究グループが、関節炎の原因となる免疫細胞(T細胞)が認識する自己抗原を同定。その自己抗原に対する反応性が関節リウマチ患者さんの約17%に認められたと発表しました。
「免疫の司令塔」といわれるT細胞は、自己免疫疾患の根本的な原因とされていますが、T細胞が認識する抗原を同定することは難しく、長らくわからないままでした。今回の研究では、まず、関節炎を引き起こす自己反応性T細胞を特定するため、関節リウマチを自然に発症する関節リウマチモデルマウス(SKGマウス)のT細胞から、T細胞の受け口(受容体)を単離。そのT細胞受容体が1種類だけを表面に出しているT細胞のみを持つマウスを作製し、そのT細胞の病原性の有無を調べました。
16.8%の患者さんに「RPL23A」が
その結果、特定のT細胞受容体を持つマウスでは、自己免疫性関節炎を自然に起こしたため、その自己反応性T細胞が関節炎の原因となることが判明しました。次に、このマウスの血液中に産生される自己抗体を利用し、その自己反応性T細胞が認識する自己抗原「RPL23A(60S ribosomal protein L23a)分子」を同定しました。
さらに、京大病院リウマチセンターに通院中の関節リウマチ患者さんの血清を調査したところ、374名中64名(16.8%)がこの抗原に対する抗体を持つことがわかりました。また、リウマチ患者さんの関節液中のT細胞が、RPL23A分子によって免疫反応を引き起こすことも確認されたといいます。これら一連の結果は、関節リウマチ患者さんでも、RPL23Aが病気の原因となる自己抗原のひとつとして働くことを示しているそうです。
この研究で確立した方法は、いまだ原因がわかっていない他の自己免疫疾患の原因抗原の同定にも応用できる可能性があると期待されています。(QLife痛み編集部)