筋肉を保ちながら脂肪を減らせば、膝の症状は改善します

[変形性膝関節症と生活] 2015年1月27日 [火]

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自分の適正体重を知りましょう

 肥満は変形性膝関節症の原因の一つであり、症状を悪化させる要因でもあります。両足で立っている状態では、単純にいえば、体重の半分の重さを片方ずつの脚で支えており、それだけの荷重が膝にかかっていることになります。歩くときには、そのおよそ3倍、階段の昇り降りではおよそ6~7倍の荷重が膝にかかるといわれています。

 体重が重いと、膝により大きな負担がかかり、症状を誘発する→膝に症状があると、痛みのために動くのが面倒になる→運動量が減り、ますます体重が増加する・・・というような悪循環に陥ることは容易に想像がつきます。この悪循環を断ち切るためには、減量が欠かせません。

 まず、自分が肥満であるかどうか、減量するとしたらどれくらいの体重を目標としたらよいかを知るために、自分にとって適正な体重の算出のしかたを覚えてください。これはBMI(Body Mass Index;体格指数)と呼ばれる数値を利用します。BMIは、肥満ややせを判定する基準として用いられる値で、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求めます。BMI値22がもっとも健康で病気になりにくい値(標準体重)といわれています。

 適正体重と目標となる減量の目安は、以下のやり方で求めることができます。

BMIによる適正体重と減量の目安

BMIによる適正体重と減量の目安

エネルギー収支の基本を身につけましょう

 体重が増加していくということは、消費するエネルギー量以上に、エネルギー量を摂取しているということ、つまり動いて燃やしきれないだけの量を食べているということです。家計でいえば、支出に比べて収入が多い状態です。家計なら貯金はうれしい話ですが、体重の貯金は健康を妨げる要因となるだけです。体重の減量に限っていえば、収入より支出が多い浪費家のほうが望ましいことになります。

 体重増減のメカニズムは、

・摂取エネルギー量が消費エネルギー量より多い→太る
・摂取エネルギー量より消費エネルギー量が多い→やせる

です。

 まずは、自分のエネルギーの収入と支出、つまり、摂取エネルギー量=ふだんの食事でどれくらいエネルギーをとっているのかと、消費エネルギー量=日常生活のなかでどれくらい体を動かしてエネルギーを消費しているかを意識しましょう。

 実際に活動の強度や時間を正確に測定するのはむずかしいですが、生活活動強度と適正体重を利用すると、消費に見合った摂取エネルギー量を算出できます。

 生活活動強度とは、仕事の種類や日常の運動習慣から大まかに1日の運動量を軽度、中等度、重度に分類したものです。強度に応じて、体重1kg当たりどれくらいのエネルギー量が必要であるかの目安が示されています。生活活動強度別の体重1kg当たりの消費エネルギー量と適正エネルギー量の求め方は、下記の表を参照してください。このエネルギー量を摂取していれば、体重は増加しないことになります。

適正体重を維持するには

適正体重を維持するには
生活活動強度 1日の生活 体重1kg当たりの消費エネルギー量
軽度 大半を座って過ごす(デスクワークが中心、主婦など) 25~30kcal
中等度 立ったり座ったりしながら過ごす(立ち仕事が多い職業) 30~35kcal
重度 体を動かして過ごす(力仕事の多い職業) 35kcal~
※なお、肥満度や健康状態、年齢などにより変わります。

堅実な計画でリバウンドを防ぎましょう

 5kgであれ10kgであれ、体重を一気に減らすのは容易なことではありません。短期間の急激な減量にはリバウンドの危険性もあります。理想は1カ月に1kg(脂肪1kg=7000kcal減)程度のゆっくりとしたペースです。なによりも大切なのは、リバウンドしないこと。リバウンドの繰り返しは、結局、体脂肪の増加につながり、やせにくい体になってしまいます。ゆったりペースの堅実な計画こそ、実は減量への近道です。焦らずに、減量のための生活スタイルを長期間継続し、その生活スタイルが自然と自分の生活習慣として根づくようにすることがポイントです。

 そして、もう一つ大切なことは、減量の目的を理解することです。減量の目的は、単に体重を減らすことではなく、筋肉を減らさずに脂肪を減らすこと、つまり筋肉量を増やすことなのです。摂取エネルギー量だけを減らすのではなく、必要な栄養素はしっかりとることを忘れないようにしましょう。筋肉量を維持・増加することは、変形性膝関節症の進行を食い止める意味でも大切です。

 また、食事を見直して摂取エネルギー量を減らすだけでなく、体を動かすことで消費エネルギー量を増やすという方法もあります。運動療法を継続して行えば、病気の進行を抑えることにもつながります。運動以外に、家事などの生活活動を積極的に行うだけでも、消費エネルギー量は増やせます。運動や生活活動で消費するエネルギー量の目安はこちらを参照してください。

 太っている人のなかには、食べる量がそれほど多くないのに、筋肉の量が少ないために基礎代謝が低い(なにもせずじっとしているときに消費するエネルギー量が少ない)というような、太りやすい体質になってしまっている人もいます。その場合は、食事の見直しだけでは減量できないこともあり、積極的に体を動かすプランを加えたほうがよいでしょう。

減量プランを立てましょう

減量プランを立てましょう

食事記録や体重測定グラフで成果を実感しましょう

 減量の成功の秘訣(ひけつ)の一つに、日々の記録をつけることがあげられます。1日3食の食事内容の記録をつけていけば、その日を振り返って問題点を見直すことができます。慣れてしまえばさほど面倒ではないのですが、抵抗があるという人は、体重測定だけでも効果が期待できます。

 できれば朝晩2回、毎日同じタイミングで体重を測り、グラフに記録します。体重計は100g単位の変化がわかるデジタル式がお勧めです。順調に減らない時期もありますが、減り始めると励みになります。また、逆に増えてしまったときには、思い当たる理由がないか考えてみて、一言メモを残しておくのもよいでしょう。

 20歳のときの体重がその人にとっての適正体重という考え方もあります。ついた脂肪、増えた体重は長い時間をかけて蓄積されたものです。急がずに、ある程度の時間をかけてもとどおりにしながら、膝への負担を軽くしていきましょう。

食事記録と体重測定グラフをつけましょう

食事記録と体重測定グラフをつけましょう
運動や生活活動で消費するエネルギー量

56歳、身長160cm、体重75kgの女性をモデルケースとした、おもな運動や生活活動で消費するエネルギー量の一覧です。
なお、消費エネルギー量は、女性より男性のほうが多く、体重の少ない人より多い人のほうが多く、また、年齢の高い人より低い人のほうが多くなります。

運動内容 時間 消費エネルギー量
生活
活動
ふつうに歩く(通勤、買物) 60分 136kcal
階段を昇る 10分 70kcal
階段を降りる 10分 32kcal
デスクワーク 30分 20kcal
乗り物に立って乗る 30分 32kcal
自動車の運転 60分 32kcal
自転車に乗って運転 30分 65kcal
散歩 30分 49kcal
入浴 30分 74kcal
炊事(準備、片づけ) 30分 52kcal
ふとんの上げ下ろし 10分 38kcal
ふとんを干す、取り込む 10分 53kcal
掃除機をかける 30分 55kcal
ぞうきんがけ 30分 113kcal
洗濯(干す、取り込む) 30分 71kcal
洗濯(アイロンがけ) 15分 24kcal
家庭菜園、草むしり 60分 129kcal
運動内容 時間 消費エネルギー量
運動 ウオーキング 30分 113kcal
ジョギング(120m/分) 30分 194kcal
ハイキング(山地) 60分 291kcal
サイクリング(時速10km) 30分 110kcal
筋力トレーニング 30分 311kcal
腹筋運動 10分 82kcal
ダンベル運動 20分 248kcal
ラジオ体操 30分 113kcal
水泳(クロール) 30分 647kcal
縄跳び 30分 259kcal
エアロビクスダンス 30分 129kcal
ダンス(軽い) 30分 97kcal
ゴルフ(丘陵) 60分 324kcal
テニス 30分 194kcal
バドミントン 30分 194kcal
卓球 30分 162kcal
ボウリング 30分 81kcal

※治療中の人は、行ってよい運動について主治医に相談してから、無理のない範囲で行いましょう。

(正しい治療がわかる本 変形性膝関節症 平成21年2月28日初版発行)

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