関節リウマチの症状が少なくなる「寛解」を目指して

[関節リウマチを知る] 2015年4月14日 [火]

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治療の具体的な目標を立てる

 すべての病気で治療の最終的なゴール(目標)は、「病気にかかった人が、健康な人とほぼ同じ生活を送ることができる状態」ですが、かつて関節リウマチは“治らない”と考えられていたため、ゴールを掲げることはできませんでした。しかし、今では早い時期から高い効果を有する薬を使うことで症状をコントロールできるようになりました。ですから、生活の質(QOL:Quality of Life)を高めることを念頭に、医師と患者さんとが具体的な目標を定めることが推奨されています。例えば次のようなものです。

・関節の痛みや腫れなど、関節リウマチによって引きおこされている症状をコントロールすること
・関節破壊の進行を抑え込み、進行しないように予防すること
・からだの機能障害を予防し、正常化すること
・病気のため参加できなかった社会活動などに参加できるようになること(例:職場に復帰する)

 これらの目標を達成するために、診療の際には、病気の活動性(腫れや痛みのある関節の数/医師の評価/患者の自己評価/血液検査の数値)を点数化して、合計点数により病気の活動度を判断します。そして目標の点数を設定し、次の診療の際には数値が達成できたかなどを診て、改めて次の目標を定め、薬を追加したり変更したりします。このように、一歩ずつ進んでいきます。医師と患者さんとがコミュニケーションをとりながら、下図のように「寛解」を目指すのが、現代の関節リウマチ治療です。

具体的な目標を定めて治療を進める
具体的な目標を定めて治療を進める

関節リウマチの3つの寛解とは

 「寛解」という言葉を辞書でひくと「病気そのものは完全に治癒していないが、症状が一時的あるいは永続的に軽減または消失すること」(広辞苑)とあります。関節リウマチでは、病気の根本的な原因がわかっていないため、現時点では「完治」は難しいと考えられています。しかし「寛解状態」ということであれば、早期に治療を始めた人はもちろん、近年では長年関節リウマチを患ってきた人の中にも、治療の効果が上がり、寛解状態に到達した例も出てきています。

 寛解は、(1)臨床的寛解、(2)構造的寛解、(3)機能的寛解という3つの側面からとらえられており、治療の最終的なゴールは、この“3つの寛解”を達成し、維持することです。

  1. 臨床的寛解とは、関節の痛みや腫れもなく、検査の値も一定以下である状態
  2. 構造的寛解とは、X線撮影等の画像診断で、新たな骨破壊が見当たらず、関節破壊の進行が抑えられている状態
  3. 機能的寛解とは、日常の生活面で体の働きが健康な人と同じ程度まで回復し、QOLが改善されている状態

寛解は、薬がよく効いている状態で達成されるため、通常「寛解状態」に至っても服薬は続けます。何年かにわたって寛解状態が維持できたときに限り、医師と患者さんとの合意のうえで服薬を中止し、それでも寛解状態が維持できる(薬剤中止寛解)かどうかを診ます。薬物療法を中止した場合も、病気の活動性が再び高まっていないかどうかチェックするために定期的に受診する必要があります。

ゴールは3つの寛解の達成・維持
ゴールは3つの寛解の達成・維持

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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