関節リウマチの診断 ― 欧米の新分類基準

[診断と治療法の決定] 2015年4月28日 [火]

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骨に異常が生じる前でも「関節リウマチ」と診断可能

 2010年に、ヨーロッパリウマチ学会とアメリカリウマチ学会が、関節リウマチの新しい診断基準を発表しました。これは、早期に適切な治療をすれば、病状の進行を止めることができるようになったため、早期に関節リウマチを発見することを目的に作られたものです。正確には、他の病気と関節リウマチを見分ける「分類基準」と呼ばれます。従来の分類基準は、ある程度関節破壊が進行しないと、関節リウマチの診断がつかないものでした。新基準は骨にびらん(ただれ=骨破壊の前駆症状)などの異常が生じる前でも、腫れや痛み、血液検査から診断が可能です。

新分類基準による関節リウマチの診断
新分類基準による関節リウマチの診断

病気の活動性を点数で評価して目標設定する

 関節リウマチの治療の目標は、病気の“活動期”をできるだけ抑え込み、“平穏期”を長く維持すること。つまり、病気をコントロールして寛解状態にもっていくことです。そのためには、病気が治療前に比べてどう変化したのかを適切に“評価”し、次の段階に向けた“目標設定”が重要です。

 関節炎の活動性の評価には、一般的に「腫れや痛みのある関節の数」「患者の自己評価」「血液検査」を点数化するDAS(Disease Activity Score)28という指標が使われます。

「腫れや痛みのある関節の数」は、全身の28の関節のうち、腫れのある関節と痛みのある関節(医師が圧して計る)の数をそれぞれ数えます。「患者の自己評価」では、左端が「0=症状なし」、右端が「100=最も悪い」とする長さ100mmのスケールを使って、今の体調がこの間のどこに位置するかを患者さん自身が示します。「血液検査」は、通常CRP(C反応性たんぱく)の数値を調べます。体内の炎症が強いほど、CRPの数値は高くなります。定期的にこれらの数値を計りコンピューターで計算させることでDAS28を評価し、病気をコントロールできているかどうかを見極めます。

 2010年には分類基準に続いて、寛解基準も改訂されました。新寛解基準は、「『腫れのある関節』『痛みのある関節』『患者の自己評価』がすべて1以下」、もしくは、これらの項目と「患者の自己評価」と同じスケールを用いて医師が行う「医師による疾患活動性評価」を加えた点数(CDAI = clinical disease activity index)が2.8以下と定められました。X線検査の結果を待たずに診察のみで評価できるため、利用しやすい基準ですが、関節炎をほぼ完全に抑えなければ、寛解は達成できません。

関節リウマチの活動性を評価する「DAS28」
関節リウマチの活動性を評価する「DAS28」

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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