関節リウマチの診断 ― 検査から何がわかるか

[診断と治療法の決定] 2015年5月12日 [火]

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血液検査からわかること1 ― 免疫異常

 関節リウマチかどうかを診断するための血液検査では、主に免疫に異常を示す物質が含まれているかどうか、体内での炎症反応はどうかを調べます。免疫異常を示す指標としては、「リウマトイド因子」と「抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)」という2つの物質に注目します。

リウマトイド因子とは
 免疫反応で重要な働きをするIgG(免疫グロブリンG)を、抗原(免疫反応の攻撃目標)と見誤って反応する自己抗体(抗原とくっついて無毒化するもの)の一つです。

 関節リウマチの患者さんの70~80%の人に、正常値を超えて多く検出される(陽性反応を示す)ことから、関節リウマチを診断する際の必須の検査とされています。しかし、関節リウマチであっても、20~30%の人では陰性となります。また、関節リウマチ以外の膠原(こうげん)病や呼吸器疾患、細菌性の感染症、がん、さらに、健康な高齢者でも陽性になることがあります。

抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)とは
 関節リウマチでは、免疫反応で滑膜を異物と認識して攻撃します。炎症をおこした滑膜を調べると、そこには“シトルリン化たんぱく”というたんぱく質の一種があることがわかりました。関節リウマチ患者さんでは、シトルリン化たんぱくを抗原として反応する自己抗体が血液中に作られています。それが抗CCP抗体です。リウマトイド因子よりも高い割合で関節リウマチを識別できますが、これが陰性でも関節リウマチである場合もあります。

自分のからだを攻撃する特別な抗体の有無を調べる
自分のからだを攻撃する特別な抗体の有無を調べる

血液検査からわかること2 ― 炎症反応

 関節リウマチでは、関節で慢性的に炎症がおこっています。体内に炎症があるかどうか、その重症度はどのくらいかを血液検査の炎症反応で調べます。

赤血球沈降速度(ESR)とは
 文字どおり、血液中の赤血球が沈むスピードを計ります。方法としては、血液が固まらないように抗凝固剤を加え、静止したガラス管の中で赤血球の沈降速度(1時間あたり)を調べます。関節リウマチの活動性が高いと、貧血(赤血球の数や容積が減少する)や、肝臓で作られる“急性期反応物質”(炎症にかかわるたんぱく質)、リンパ球が作り出す免疫グロブリンの増加によって、赤血球沈降速度は速くなります。

CRP(C反応性たんぱく)とは
 前述の急性期反応物質の一つです。炎症性サイトカインが増えると、肝臓を刺激して急性期反応物質を産生しますが、とくにこのCRPは、ある期間にいちじるしく増加するため、強い炎症がおきていることがわかります。一般的に、炎症のおこっている関節が多いほど、また、その関節が大きいほどCRPの値は高くなります。

 この2つのほかに、「血色素量」(貧血検査)や、「血小板数」も炎症と多少は関係します。

 診断を確定するためだけでなく、治療が始まってからも、定期的にこれらの炎症反応を示す数値を見て、薬がきちんと効いているかどうかを判断します。また血液や尿の検査で、合併症や薬の副作用はないか、関節の破壊は進んでいないかなどをチェックします。血液以外では、関節液を調べて、関節リウマチの活動度を診ることもあります。

体内の炎症の程度を調べる
体内の炎症の程度を調べる

画像診断でわかること ― 関節の状態

 欧米の新分類基準には、関節リウマチかどうかを診断する項目に、画像診断は入っていません。これは、骨に影響が現れる前の、早期の関節リウマチをも発見することを目的とした分類基準だからです。しかし、関節リウマチの進行度や薬の効きめを確かめるために、関節の画像はとても有効です。画像による検査では、レントゲン検査(X線)が主流ですが、最近はMRI(核磁気共鳴装置)やCT(X線の一種)、 超音波(エコー)等の検査を行うこともあります。それぞれに長所短所があり、必要に応じて用いられます。

レントゲン検査
 関節周囲の骨の萎縮(いしゅく)、関節近くの骨のびらん(ただれて細かい凸凹が生じている)、骨吸収(骨に小さな孔があく状態)、関節面の破壊、関節の脱臼などは読みとれますが、早期の滑膜病変を見つけることはできません。

MRI検査
 骨の中や関節の軟らかい組織も撮影でき、滑膜の炎症などの状態もかなり正確に評価できることから、早期の病変の発見に有効です。ただし、撮影自体に時間がかかり、一度にたくさんの関節は撮影できません。また、検査費が高額になるというデメリットもあります。

超音波検査
 関節を動かしながら、関節の軟らかい組織の状態を診ることができます。骨の小さな傷や滑膜の厚さ、関節液のたまっている様子などから、炎症の程度がわかります。しかし、骨の中は見ることができません。外来の診察室で気軽に使えるのが利点ですが、正確できれいな画像を得るには技術が必要です。

関節の状態を判断する画像検査
関節の状態を判断する画像検査

監修:林 泰史 東京都リハビリテーション病院院長
1939年生まれ。1964年京都府立医科大学卒業後、東京大学整形外科に入局。東京都衛生局技監(東京都精神医学研究所所長兼任)、東京都老人医療センター院長、東京都老人総合研究所所長などを経て2006年より現職。
著書は「老いない技術」(祥伝社)、「骨の健康学」(岩波書店)など多数。

(スーパー図解 関節リウマチ 平成25年9月26日初版発行)

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