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[クリニックインタビュー] 2010/01/22[金]

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 患者さんのこと、地域のことを一番に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医がたくさんいます。「町のお医者さん」にもっと親しんでもらいたい、ドクターと生活者との距離を縮めたい、という目的で連載を開始した「医療人」。おかげさまで連載50回を迎えることができました。今回は、これまでの記事を振り返り、個性豊かなお医者さんの素顔をたどってみたいと思います。

人に喜んでもらいたい ―― 医師を目指したきっかけは?

iryoujin50_001.jpg 「親が医者だったから」「理数系が得意だったから」など、多くの先生は子供の頃から医師の道を目指していたようです。子供の頃はお笑いスターになりたかったというのは東陽町東口クリニック・福地勇人院長(第16回 「人」に喜んでもらいたい。お笑いスターばかりではなく、学校の先生や作家など、とにかく「人に喜んでもらえる仕事をしたいなぁ」と考えていたそうです。中学校で最初のテストの成績が良かったことをきっかけに「自分が一番役に立てるのは医者になることかな」と思うようになりました。貧しいなかで勤勉に励んだ二宮金次郎のまねをして、歩きながら本を読んで怒られた思い出を笑顔で話してくださいました。

 あべ整形外科クリニック・阿部康裕院長(第21回 淡々と進む整形外科の道は中学生の頃、お母様を髄膜炎で亡くしたという辛い経験が、医師を目指すきっかけでした。お母様の担当医から「今の医学で治らない病気というわけじゃなかった」と言われたことでさまざまな思いが胸をめぐり、その頃から「社会に貢献したい」という気持ちが湧きはじめたそうです。

 中にはまったく別の進路を進み、大人になってから医師を目指したお医者さんも。藤が丘南口クリニック・後藤隆太院長(第24回 「人間相手の仕事」に就きたくては、高校を卒業後、東京理科大の応用数学科に入学します。同級生の多くは商社や銀行に入社しますが、「確かに数学は好きだけれども、本当に自分は数字を相手にする仕事をやりたいのだろうか?」と疑問を抱くように。そして数字ではなく人間を相手にする仕事として医学部の受験に思い至ります。当時から交際していた奥様とも意見が一致し、二人で医学部を受験。現在もご夫婦でクリニックで働いています。

Q1:子供のときから医者志望?
――Yes 44% / No(他の職業) 56%

iryoujin50_q1.png 宇宙飛行士や野球選手、映画監督…普通の子供時代がイメージされる微笑ましい回答もある一方で、親族や親しい人が病にかかったことがきっかけ、という方が多くいらっしゃいました。やはりそういう大きな体験は、医師の世界に限らず人生観に大きな影響を与えるのでしょう。
Q2:受験時、医歯系を迷わず希望した?
――Yes 90% / No(他の学部系) 10%

iryoujin50_q2.png もちろん医歯系は難関校が多く、早くからの受験勉強が必要ですのでこの結果は納得の感がありますが、少数派の方の経歴は本当に個性的。理系大学や通信制からの転向をはじめ、銀行員や予備校講師から医大、歯大に入ったものの医科に入り直す、というケースも。

 自分の決めた道を歩き始めるのは、いくつになってからでも遅くはないと感じさせてくれたのが、統合医療機関 吉田クリニック・吉田健太郎院長(第15回 基準はただひとつ、患者さんの治癒に役立つかどうかのお話です。先生が医学部に入ったのは30歳の時。それまでのお仕事は予備校の先生でした。もともと人にくらべて身体が弱く、常に健康のことを考えて暮らしているうちに医学に興味を持つようになったとのこと。「人間は自分の主義主張や責任を基準に生きることが大切。それは社会生活も病気についても同じこと。患者さんにはなるべく自分の潜在的な力で治すことを考えて、じっくり病気に取り組んで頂きたいと思っています」という言葉に、ご自身の経験がにじんでいました。

 北綾瀬皮膚科・山尾浩行院長(第31回 銀行員から医師の道へも、銀行員として数年間勤めた後、医師に転向しました。その動機を「与えられる仕事にやりがいを感じられなかったり、取引の過程で損をするお客さんを見ているうちに、自分が誰のために、何のために仕事をしているか分からなくなってしまったんです。それにくらべて、医者の場合は、知識や技術面のトレーニングを積んで、自分自身を向上させることが、そのまま患者さんのためになる、というところに惹かれました」と語ります。医学部の同窓生がそれぞれの分野の最前線で頑張っているのを見ると、医者という仕事にとても満足を感じるそうです。

父や恩師の背中を見て ―― 尊敬する人は誰ですか?

iryoujin50_002.jpg ひとりの人間が医師になるためには、そこに多くの出会いがあります。尊敬する医師をお尋ねしたときに、「昭和期に活躍したすべての産科医」とおっしゃったのは、久我山レディースクリニック・青木啓光院長(第3回 コンサルティングこそが治療の第一歩。昭和期は人口の爆発的な増加があり、経済的にも急成長をみた時代。現代ほど設備も整わず、一人の医師が総合的な対応をしなければなりませんでした。産科医だった先生のお父様も、30年間の間に一度も外泊することなく働き続け、その姿を見て医師を目指したそうです。

Q3:自分の親も医者である?
 ――Yes 54% / No 46%

iryoujin50_q3.png 親御さんという視点ではこの結果ですが、それ以外の親族に範囲を広げると割合はさらに高くなります。やはり身近に医師がいることは、進路に大きく作用するようです。

 がんによる痛みや辛さをやわらげる「緩和ケア」を行っている、たんぽぽ診療所・遠藤博之医院長(第47回 種だけを抱えているから空を飛べる、たんぽぽのようには、学生時代に感銘をうけた詩人の作品から、診療所の名前をつけました。星野富弘という、脊髄(せきずい)損傷で首から下が麻痺しながらも口にくわえた筆で絵と詩を描く作家です。診療所においでになるお一人お一人の「どうしても大切なもの」をその人の人生に寄り添って行くなかでご一緒に探していく診療所になりたいという思いがこもっています。

 くさかり眼科・佐藤匡世院長(第44回 女性が自立するための仕事としてが尊敬しているのは、やはり開業医だったお父様。研究も熱心で、臨床としても患者さんにとても慕われていたそうです。亡くなられる前に病気で入院しているときのこと。「父はそのとき意識が朦朧としていたはずなんですが、『時間がかかるのは仕方がない。だけど患者さんに不快な思いをさせるような治療をしちゃいけない』って言われたんです。『患者さんが痛いと口に出すのはよっぽどのことだ』って」。その言葉で医者というのは、ただ治療をして病気が治ればいいというものではないと気づかされたそうです。

親御さんが医師の方だけにお聞きしました。

Q4:親の医院を相続して開業?
――Yes 26% / No 74%

iryoujin50_q4.png この割合は意外に感じられるかもしれません。親が医師といっても同じ土地を受け継がず新しい地域でチャレンジされたり、勤務医時代の地縁を活かすなど、さまざまな事情があるようです。
Q5:親と同じ診療科目?
――Yes 41% / No 59%

iryoujin50_q5.png 親御さんの背中を見ながら、ご自身の希望や向き不向きを考えられるからこその結果かもしれません。やはり研修を迎える頃には悩まれた方が多いようです。

患者さんの気持ちを知るために ―― 診療するときのモットーは?

iryoujin50_003.jpg 取材で伺った先生はどなたも患者さんとのコミュニケーションを大事にしていました。診察にあたって、どのような気持ちで患者さんに接しているのでしょうか? 「基本となるのは”自分が彼女の立場だったら”という考え方」とおっしゃっていたのは、池ノ上産婦人科・千代倉由子院長(第14回 常に女性の味方でありたい。そのためには、しっかり眼を見て患者さんの不安や疑問を感じ取りながら話すことを大切にしています。外国人の患者さんも多く訪れるため、なるべくたくさんの言葉で簡単な挨拶やねぎらいの言葉を言えるように勉強しています。

 病理的には「大したことはない」ものでも、患者さん自身にとってはとても辛い思いをする病気があります。皮膚科の病気にもそうした病例は多くあります。治療のためには日常生活や悩み事など、患者さんを深く知る必要があるため、松原皮フ科・松岡芳隆院長(第6回 データがすべてではないと思い知ったは「皮膚科医は感性を発揮して患者さんを知ろうとする点から、人文系の側面が強い」と言います。太宰治が雑誌『文學界』に発表した『皮膚と心』という短編小説では、皮膚を患った女性の心情について、おどろくほど的確かつ繊細に描写されているそうです。

 横浜相鉄ビル眼科医院・大高功院長(第13回 患者さんは自分の家族のモットーは「患者さんを家族だと思うこと」。患者さんを暖かく迎え入れるためにさまざまな工夫をしていますが、初診の方に名刺を渡すのもそのひとつ。以前、他の先生がされているのを見て「あ、なんかそれ、ええなあ」と思い、はじめられたそうです。名刺を渡すとお子さんの患者さんが喜ぶそうです。「子どもが喜ぶことというのは、人間が喜ぶことだと思うんです。だから大人の患者さんも、私の名刺はきっと喜んでくれているに違いないと期待しています(笑)」。(後篇に続きます

医療人の顔ぶれ 第1回~第25回





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